エンゲージ
私は晋助に死に際に会えてしあわせのままあの世に行くのかとおもったが何故か助けられた。晋助の仲間とやら(脅したのだろう)が来て私を治療したのだ。これからは病気が進行することはもうない、とのことだった。しかし筋力低下は残ったままだったため私は一人で食事すらもできない日々を過ごした。リハビリをしていくうちに腕は違和感は残るものの日常に支障がない程度になったが足がまだ回復が遅かった。
リハビリも一服し病院の中庭に車椅子で散歩をしていると話しかけられたかと思えば、許嫁君ではないか。コイツは私の事を助けたとのことだが歩けるようにしろ、と言い残して最近は全く顔も出していなかった。一応指名手配犯であるため深く竹傘を被っており顔が見えなかったがすぐわかった。
「晋一くん、久々ね」
「誰だそらぁ」
「さっきリハビリしてくれた男の子。可愛いのよ」
「…お前は相変わらずだな」
「ありがとう」
「ほめてねぇ」
「終わったの?」
「あぁ、」
竹傘からうっすらと見えた表情はとても穏やかなものだった。
「そう、よかったわね。」
「…」
「…」
「んで何しに来たの?」
「…ぐ」
「は?」
珍しくその場に立ち尽くし無言であるものの何か言いたげな晋助に痺れを切らした私はそう問いた。それに気まずそうに晋助は口を開けた。
「歩けるのかよ、」
「何よ、棚から棒に。また数歩歩けるくらいよ」
「…そうかよ」
何だ、急に現れたかと思いきや訳のわからない質問をしてくるものだから私は首をかしげた。
「…早くしろよ」
「は?」
「歩けるようになったら、やるから」
「何を」
「式」
「は、い?」
「約束したろ!帰ったらやるって。」
「えぇ?!」
つまり、歩けるようにしろ、と言ったのはバージンロードのためか?!
「ほら、手ぇ貸せ」
「…あら、ジルコニアじゃないの?」
「エンゲージリングだからな」
「似合わない言葉だこと、てか何でゴールドなのよ。知ってる?プラチナじゃないの普通」
「お前なぁ」
「ふふ」
「次は俺が待っててやる。何年でも」
「歩けないかもよ?」
「待つ」
「…そう」
「それだけかよ」
「ええ、、うん」
違うのよ、何も言えないのよ。馬鹿ね。今まで晋助を追いかけるか、待つかしかできなかったのに。待ち焦がれた男が一番欲しかったものが帰ってきたのだ。いつもなら悪態つくこともできるだろうが、私にはその余裕すらなくなっていた。
「てか泣くなよ」
「だってっ」
「本当に、帰ってくるなんて、」
「約束したろ」
「戻ってきた試しがないじゃない」
晋助はあーそうかよ、と笑った。私もつられて笑った。戻ってくる保証など何処にもなかった、ただあったのは戻ってくるという約束ただひとつ。挫けそうな時もそれだけが私の心の支えだった。それがほどけたのだ、どれだけ待たせたと思ってるんだコイツは。泣くに決まってるだろ。
「っ精々幸せにしてよ、許嫁さん」
「…はいよ」
何とか出た悪態に晋助は慣れたように受け流し私を抱き締めた。私は久々の彼の匂いに包まれながら目を瞑った。
まじて文才が好きですと言っていただいてありがとうございます!
私も許嫁待ってるシリーズ気に入ってる作品の一つです。死んでしまうのも一つの物語としていいと思ったのですが高杉さんには幸せになって貰いたいのでハッピーエンドにしました。また今後もよろしくお願いいたします。