「なぁ高杉」
剣術の稽古の休憩中に銀時は俺に問いかけてきた。こいつとは変わらずに気に食わねぇ事もあり冷たく返事をした。どうせいつもの事だあの女の体がやらしいだの、隣の席の女の乳がでかくなっただの下らねぇ話だと思ったからだ。
「んだよ」
「なまえって処女なのか?」
「はぁあああ?!んでそんな事俺に聞くんだよ!!」
おいぃいい!!?なんだその質問はぁあ!!といわんばかりに俺は銀時に食って掛かった。なまえとは親同士が決めた許嫁という仲であって当の本人である俺たちはただの幼馴染み感覚での関係であってそんなやらしい関係にだってなっていない。それどころか手だって繋いだこともねぇ…笑った奴はそこになおれ!
「いやただ単純にアイツ物凄いビッチ臭がするからよ、ほらお宅許嫁じゃない?気になってよぉ」
「確かに、前も晋助がいない所で寺子屋の生徒と仲良さげに喋っていたぞ」
ビッチ発言の続きに桂もこの話題に入ってきた。桂はもともと寺子屋自体俺となまえと一緒だったのもあり旧知の仲だった。故になまえが八方美人でへらへらしている癖に腹の中がブラックホールだということも知っている。桂がいう寺子屋の生徒と仲良くなるのもアイツが自分に貢ぐ男が好きなだけだ。決して俺はイライラなんてしてねぇ
「知らねぇよ、んな事!そもそも許嫁は俺が決めた事じゃねぇし!」
「でも好きなんだろ?」
「好きじゃねぇ!あんなブス!迷惑だよ!!」
「全く高杉は相変わらず素直じゃないな」
「素直に答えてるんだけど?!」
「じゃああれを見てもそういえるの?」
銀時と桂にからかわれ、指を刺された先にはこの寺子屋のお局と名が高い女子になまえが並々ならない雰囲気を醸し出しながら寺子屋の裏通りにある人気のない場所に連れていかれる所だった。お局といわれた女は気にくわない女を苛める疑惑があったりしていい噂を聞かない。
「あ、の馬鹿っ」
俺は二人の影を追いかけた。決してアイツが心配だったわけではなく、アイツが怪我したら両親が何故守らなかったのかと煩いからである。それをいかに分かりやすく説明しても銀時達はニヤニヤしていたので拳骨を食らわせた。何故か三人で結果として裏の影に身を潜めお局となまえの動向をうかがっていた。
「貴女、いつまで高杉君に付きまとうのよ!高杉君だって迷惑してるんだから早く止めてよね」
お局が開口一番になまえの胸ぐらを掴んで怒鳴り散らした。普通の女ならここで恐怖に怯えて涙を浮かべたりするのであろうが俺の許嫁はお局に対して冷たい視線を送った。
「大人しくついてきてやって、開口一番がこれかよ」
「何よ!あんたが悪いんでしょ?!」
「まず貴女は高杉君が迷惑していると言ったけどそんな事私にはどうでもいいのよ」
「は?」
「あれとは許嫁であって将来は嫌でも結婚をしなくてはならない立場なだけだけど」
「だったら前たっくんともデートしてたのみたんだけど、それは浮気じゃないの?!」
「あぁ、あれはたっくんが誘ってきたのよ。プレゼントを買いたいって」
「え、」
「プレゼントをしたいって思ってたんだけどどれがいいのかわからないって相談されてね、一緒に買いにいったの」
「嘘よ、たっくん私の事嫌いだって」
「素直になれなかったんじゃない?そんなことよくあることじゃないかしら。」
「…ごめんなさい、私貴女がリア充しているのに嫉妬して酷いこと言ったわ。本当は、」
「わかってるわよ。貴女が本当に好きな人が誰なのかなんて、すぐわかってたわ。ほら早く行ったら?」
「 …うん、ありがとう」
お局はここに来たときとは打って変わって潮らしくなりこの場を立ち去って行った。そして俺達三人は同時にこう思ったのだった。
「「「(なのこの修羅場?!)」」」
「ふぅ、さっきから何してるの三人とも」
「げ!」
「やば」
俺達が居たこと気づかれていたようでとっても笑顔なアイツがこちらに手招きをした。
「ていうかあれは何んだよ」
女の修羅場を見て怯えている銀時と桂に変わり俺が問いただした。ちなみにこのような修羅場には目の前の女のせいで何回か遭遇したことがあるので抗体がついていた。
「あれは修羅場をスムーズに逃げ切る作戦」
淡々となまえは答えた。
「前々から何かと突っかかるあのブスがたっくんにフラれたって情報仕入れてね、そのたっくんが他の女が好きって事も知っていたから一緒にプレゼントを買いに行ったの。勿論ブスじゃなくって本命の女にね、ふふふ。」
「「怖っ」」
やめてやれ、桂と銀時のライフはゼロだぞ。
「しっしかしこれではお前が悪者になるのではないか?」
桂がどぎまぎした様子でなまえに問う。
「あぁ、大丈夫。さっきも貴女です何て言っていないし、それに気付いたブスは逆上して次にターゲットにするのは本命だから私には関係ないはずよ」
ざまぁねぇわね、と笑うなまえに銀時と桂は泡を吹いて倒れた。まさかこんな修羅場を見せられるとは思ってもみなかったのだろう、こいつはこういう女だ。
二人を寺子屋に投げ捨てていつものようにしょうがなくなまえと一緒に帰ってやる。
「なまえ、お前。いつもあんな事してんのかよ」
「やられたらやり返すのが常識だから」
「次は俺に言えよ」
「は?」
「んだよ」
「いや、まさかそんな言葉が晋助君から聞けると思っていなかったから」
「ただ俺の事で色々言われるのが癪に触るだけだ!」
前の寺子屋でも許嫁ということで癪に触る奴らに弱い女であるなまえが標的になりリンチされそうになったが何故か上手いこと切り抜けてやがったが、その原因が今回も同様な理由だったのがやけに腹が立った。
「そう」
「…んだよ」
「基本的に私は迷惑だと思われてると思ってたから」
「な!」
「あら図星?」
「聞いてただろ?!」
「何を?」
「コノヤロー!」
先程の銀時達との会話を思い出した。俺はこいつの事を迷惑だと言ったが丁度聞いていたのだ。
「ふふふ」
ほんとっむかつくな!
「…なんかあったらすぐ言えよ!あと次に男と出掛けたら許嫁解消だかんな!」
「なにそれ嫉妬?」
「違う!!」
「そう」
「そう思ってねぇだろ?!」
「あ、ちなみに私の最初は旦那になる人にしているから」
「それもきいてたんかよ?!!」
「なっ?!」
糞!なんで俺は安堵してるんだよ!こいつとはただの幼馴染みだっての!!