喉が渇いて目が覚めると、眠る前は隣にあったはずの温もりが感じられない。
急に襲いかかってくる不安を払拭するように身体を起こすと、静かに扉が開いた。
「起こしました?」
ベッドの端に腰掛けた壱馬くんは、はだけていたらしい私のキャミソールの肩紐を直してくれた。
「ごめん、水取り行ってました。飲みます?」
『うん』
キャップを開けて差し出してくれたペットボトルを受け取る。こういう些細な優しさすらいつまでも変わらなくて、いちいち愛を感じる。
自分で感じていた以上に水分を欲していたらしく、冷たいそれを一気に流し込む。
壱馬くんに渡すとそれは彼も同じだったようで、ゴクゴクと喉が鳴る音が聞こえる。
「1人にしてごめん、寝よか。」
横になった壱馬くんが伸ばした腕の中に当たり前のように身を寄せた。
少し高めの体温に安心して擦り寄ると、優しく頭を撫でてくれる。
彼は当然のように私を甘やかしてくれる。
年は壱馬くんの方が下なのに、そんなことを感じさせない程自然に包み込んでくれる。
人に甘える事が苦手だった私は、甘やかしたがりな彼のおかげで随分と甘えたになったと思う。
当たり前のように甘え甘やかされる関係、恋人同士というのはこれが普通なのだろうか
分からないけれど、きっと少し過剰なくらい、私たちはそんな関係だと思う。
壱馬くんと出会って過ごすようになってからのこの数年だけで、一生涯分甘やかしてもらって幸せにしてもらった。文字通り、身に余るほど。
『壱馬くん、』
「ん?」
『だいすき』
普段私から言う事は少ないけれど、なんだか不意に伝えたくなった。
顔を上げて壱馬くんを見ると、ぱちっと瞬きをした次の瞬間、優しく優しく微笑んだ。
「俺は愛してる」
そんな言葉と共に蕩けそうな表情で見つめられると、こちらの方が恥ずかしくなってしまって。
思わず胸板に額をくっつけるように俯いてしまう。
「何、自分から言うといて照れてんの?」
『うるさい』
「可愛いなあほんまに」
憎まれ口をものともせずぎゅうっと抱き締められて、頭の上からは噛み殺したような笑い声が聞こえてくる。
「儚さんてほんま、俺のツボついてくるのが上手いですよね。」
『そんなつもりないのに。』
「その無自覚なところとかも、いちいち全部惚れ直してまうねんなあ…」