たとえば、明日世界が終わるなら、広斗はどうする?
アルコールで溶けた声が突拍子もないことを紡いだ。
お前はどうすんだよ
ろくに考えもせずに返して顔を見れば、隣の酔っ払いは存外寂しそうな光を目に宿しながら
夜明けまでに、広斗がいちばんすきなとこに連れてって
そう呟いて笑った。
その呟きを聞いてやっと、俺は少し後悔した。
今酒の力を借りて口をついて出ただけで、こいつはもしかしたら、いつもそんなことを考えているのかもしれないと。もっと真剣に考えて答えてやればよかったと。
そこまできて、続きは真剣に考えることにした。
朝焼けの綺麗な道、行きつけのバー、あたたかな布団。頭の中を選択肢が泳いぐ。
そして、最終的に辿り着いたその場所は、ユリの腕の中だった。だから連れて行くのは不可能で、だけどそう言ったなら、果たしてこの恋人はどんな顔をするのだろうか。
そんなことを思って結局、薄い笑いしか返せなくて、それにまた情けなさを感じた。
俺はユリの過去や夢の中に入り込んで守ってやることは出来なくて。それはつまり、こいつが1番苦しんでいる場所に俺は手が届かないということで。
どんなに喧嘩や商売で名を馳せようが、そんなことではなんの意味もないのだと、無力感と自分自身に対する憤りが交錯する。
俺に出来ることはせめて、もう二度とこの先の未来でこいつが辛い思いをしなくていいように俺が隣にいること。こんな世界に身を置く俺が思ってもいいことではないのは分かっている。それでも俺は、俺が、こいつを守って、一生傍に居たいと切望した。
そんな、身の丈に合わない馬鹿なことを思っていたからだろうか。
どこまでも続くと漠然と信じていた幸せは、突然失われた。
燃え盛るような恋ではなかった。
ただ穏やかに、生温い温度で一緒に時を過ごした。それがどんなに心地良く、ふとした瞬間に泣きそうになるくらいに愛しい時間だったか。
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