こころとの約束の日。
作った晩御飯の上にラップをかけてエプロンを外すと、玄関が開く音がする。
はっとして時計を見ると、帰ってくるには早すぎる時間。なるべく顔を合わせたくなくて、帰ってくる前に出てしまおうと思っていたのに。

リビングに入ってきたタイミングで笑顔を貼り付けてキッチンから出る。



『おかえりなさ…っ!』



容赦なく振り落とされた拳の衝撃で床に倒れ込む。
こころとの約束があったから、機嫌を損ねないように
いつも以上に気を張っていた、それなのに。
こんなんじゃこころに会いに行けなくなってしまう。どうして、どこで、
困惑と痛みに思考が支配される中、紙を叩きつけられる。



「こいつか?」



しゃがんだ彼はその中の一枚を拾って私の顔の前に持ってくる。
そこには、手を繋いでマンションに入るこころと私が映っていた。



『っ…』



あの日、こころが桜を見に連れ出してくれた日。

頭の中で警報が鳴り響く。
どうにかしないと。こころの未来を潰すわけには絶対にいかない。



「全部調べてあんだよ。明日手を打つ。」


『やめて!』


「っるせんだよ!!」



髪を引っ張られて頭を持ち上げられたかと思うと、そのまま強く床に叩きつけられる。
立ち上がった彼に全身を踏みつけられて蹴られて、内臓までどうにかなってしまいそうだ。

こころ、たすけて、こころ、



「てめえ舐めてんだろ、誰のおかげで生活出来てると思ってんだ?お前みたいな見た目しか取り柄がない女が調子乗ってんじゃねえよ!!」



こころ、こころ、



「お前みたいな汚ねえ女拾ってやったのによ、何考えてんだ?」



こころ、助けて

こころに会いたい

こころ、こころ、



「きったねえよなあ、親父のだけじゃ飽き足らず若い男のまで咥え込んで喜んでたのかよ、あぁ!!???」



こころ

こころ、



ばいばい



『っ…めて、おねがい、』


「うるせんだよ」


『おねがい、お願い、します…っ!なんでもするから!なんでもする、仕事も辞める、ずっと家にいるから、もう、あなたの言う通りにするからっ、だから…!お願い、この子のことはっ…お願いします…っ!』



こころ、約束、守れなくてごめんね。




「はっ…お前の泣き顔ってなーんでこんな煽られるんだろうなあ?おいこっち向けよ、」


『っ…』



こころ


あいしてるよ






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