儚は、私の大切な女の子。
出逢った時から特別で、私の宝物。
透き通った瞳と屈託のない笑顔に恋をしたのは、もう思い出せないくらい遠い昔。
そして、儚も同じ気持ちでいてくれている事に気付いた時から、おかしくなってしまった。

いつでも近くにあった小さな身体を抱き締めたかった。薄い唇にキスをして、愛してると伝えたかった。
だけどあまりに綺麗な儚に私の欲をぶつけて儚を汚してしまうのは、私にとっては何より恐ろしい事だった。
好きになればなるほどドロドロに歪んでいく気持ちが怖くて、儚を私のものにしてはいけない。いつしかそう思うようになった。

儚の気持ちも分かっていて、私はわざと他に恋人を作っては儚に紹介して、遠ざけようとした。
それでも儚はいつも私の傍にいて、決して離れようとはしなかった。
儚をどんどん好きになるだけで、そんな私が他の人と長続きするはずなんてなくて。

そんなある日、酔っ払った足で無意識に儚の家に向かった。
好きな人を汚したくない為に好きでもない女を抱いて、自己嫌悪を繰り返して。ダメだと思うのにいう事を聞かない、どうしても儚が好きで仕方がない自分が嫌で、もうどうしていいのか分からなくなっていた。
儚は、色んな思いが入り混じって涙が止まらなくなった私を優しく抱き締めた。
1番愛しい温もり、優しい匂い、柔らかい肌、焦がれるほど欲したそれに、全てが壊れた気がした。