少し掠れた低い声も、綺麗な長い髪も、真っ白で華奢な身体も、全部が焦がれたものだった。
女の子の身体はこんなにも安心するものだっただろうか、愛しい人に抱かれるのは、こんなにも幸せな事なのか。
離れなければいけないと分かっていても、私はどうしようもないくらいに幸せで、ビョリへの想いは強くなっていく一方で。
ビョリと離れていた間の苦しさや、他の男に触れられた怖さ。そして溢れんばかりの彼女への気持ち。ずっと我慢していたそれが、彼女の温もりに包まれて溢れ出した。
泣き噦りながらただ彼女の名前を呼んで求める私を、優しく抱きしめて、深く愛してくれた。
その全てからビョリの気持ちが伝わってきて、胸が張り裂けそうな程苦しくて、愛しくて。
愛してると彼女が伝えてくれる度に、私は間違いなく世界で1番幸せだと思えた。
『……』
隣で静かに眠るビョリ。
繋ぎ合ったままだった手を解いて、柔らかいブロンドの髪の毛を撫でる。
愛しい、大切な大切な彼女。
優しい貴女を沢山振り回して、ごめんね。
ビョリはどんな人と結ばれて、幸せになるんだろう。いつか大切な人が見つかった貴女が、誰より幸せになれるように、ずっと願っているから。
『…愛してるよ』
そっと唇を重ねて、暖かい腕の中から抜ける。
もう、十分だ。
『っ…』
自室に帰ってきて、瓶の中の薬を飲み干す。
心臓が波打って、目眩がして、気分が悪い。
お湯を張った浴槽に腕を浸けて、カッターを皮膚に当てると、自分の手が震えている事に気が付いた。
どうして、怖がってもしょうがないじゃない。
生きていたいと思ったところで、このままあの人の所に戻るの?もう、愛する人の温もりには触れられないというのに。
せめて、ビョリに触れられた感触が残っている内に、彼女の温もりを覚えているうちに、消えてしまいたい。
私には失うものなんてひとつもない。
そう思うと、頭が真っ白になった。
赤く染まった浴槽、ぼんやりする意識、熱い傷口。
重たい瞼を必死に開けて、膝の上の写真を見る。
幸せそうに笑う、私とビョリ。
くしゃっと笑った時に出来る笑窪が大好きだった。
ただ、この笑顔を誰よりも近くで見ていたかっただけなのに。
『…ビョ、リ……』
写真のビョリをなぞると、涙が溢れた。
ビョリ、会いたい。
貴女を愛していたかった。貴女に愛されていたかった。
私には情けないくらい、貴女だけだった。
生まれ変わったらまた、貴女と出会いたい。
そして今度こそ、貴女と生きていく事が出来たらいいな。
この世でたったひとつの、私の星。どうか貴女が、輝き続けていられますように。
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