深く沈んでいた意識を擡げる。目蓋をこじ開けて最初に目に入ったのは、愛しい彼女。
はだけたシーツを掛けようとすると、その華奢な肩に血の滲んだ歯形を見つけて血の気が引く。

もしかして、と思ってシーツをめくると、真っ白な身体はキスマークと歯形で埋め尽くされている。
所によっては痣になってしまっていて、思わずため息をつく。



「儚…」



時々、自分でもどうしても自制が効かずにこうして儚を抱き潰してしまうことがある。
ぼんやりと覚えているのは、儚の泣き顔と必死に痛みに耐える表情。



『…ん、』


「儚?」



腕の中から小さな声が聞こえて名前を呼ぶと、ゆっくりと目を開けてわたしを見た儚。



『…ビョリ』


「儚、ごめん、ごめんね。」



傷に触れないように優しく抱き締める。体温の低い細い身体。
こんなに大切な彼女に、どうしてこんなことをしてしまうんだろう。
毎度後悔しては結局また繰り返してしまって、いつか愛想を尽かされても文句なんて言えない。



「痛いよね…」



背中にまである痣をそっとなぞると、ぎゅっと抱きついてくる。



『大丈夫だからビョリ、そんな顔しないで?』


「儚が大切なのに、愛してるのに…」


『うん、分かってる。ちゃんと分かってるよ。』



透き通った声は少し掠れていて弱々しくて、こんなに小さな身体に全てをぶつけてしまう自分が情けない。

好きな仕事に愛する彼女、満足しているつもりだ。だけどいつもどこか自信がなくて、儚の事になると特に余裕がなくなる。
儚の頭も心も、隙間なく私で満たしたい。その思いはいつしか支配欲とも呼べるものになって、こうして掻き抱いては後悔するばかりで。



『ビョリ、』



私の頬に手をあてて、