何度身体を重ねても、柔らかい肌に触れる度、押し殺す様な甘い声を聞く度、目が眩む程の快感に慣れる事はない。
そして何度身体を重ねても、それ程までにのめり込んでも、脳裏に過ぎる儚の過去に心臓が痛くなる。
あれは私がまだ入庁したての頃、資料室で色んな調書を読み漁っていた時。
夫婦と長女が殺され、重傷を負いながら犯人に強姦された次女が生き残った事件を目にした。
犯人の男が語った事が事細かに書かれている調書は生々しくて、自分の過去の記憶と重なる部分に思わずトイレに駆け込んだ。
身も心も壊されたその女の子は一体どんな思いで生きているんだろう。そう思うと眠れなかった。その後どんな現場を目の当たりにしても、強烈に記憶に残ったその事件を忘れる事は出来なかった。
そして、儚に出会った。
違う班の新人として配属された儚には、所謂一目惚れだったと思う。次に名前を聞いた時にはっとした。
あの事件の子だとすぐに分かった。生きていてくれた、そして出会ってくれた。この子を守りたい。私が守る為に、私達は出会ったんだと思った。
それからゆっくりと時間を掛けて、私達は恋人になった。
男に憎悪を抱く私達が女を求めるのはきっと自然で、それでも、儚の相手が私であるという事に言いようのない幸せを感じた。
私はこの子の為にあの血の涙を乗り越えた。そう思えた。