儚を初めて見た時、衝撃が走ったのを今でも覚えてる。
まるで他の人には靄がかかっているように儚しか見えなくて、目線も心も惹き寄せられて仕方なくて。

事務所の練習生同士で出逢った私達。あの頃、言ってしまえば儚はまだ子供で、私はそれなりに恋愛も経験してきた年だった。
初めて一目惚れした相手が8歳も年下の女の子。人一倍意思が強いのにそれを表すのがとても苦手な私は、どう関わっていいのか分からなくて。
練習生として長い期間を共にして、同じグループに所属してからも、ただ仲の良い先輩後輩でしかなかった。

だけどあの日からずっと、長い年月秘めたままだった儚への想いは濃く深くなるばかりで、それはいつしか少し歪んでいるようにも思える程だった。
ファンの間では、グループの中でもよく一緒に居る儚と私のコンビを好きだと言ってくれる人が多くて、揶揄いついでに付き合ったら?なんてコメントを目にする事も少なくなかった。
そんな事が出来たなら、そう思って手を握り締めた日を何度過ごしただろう。
儚の周りの男にも女にも、時にはメンバーにすら嫉妬して、やり場のない乱れた思いに参ってしまいそうになって。

このままでは儚を傷付けてしまう日が来るかもしれない。そう思うと恐ろしくて、センチメンタルになって。そんなある日、仕事の後に儚と2人で食事に行っている時。

私達の関係は、急速に変化した。