「19時にタクシー呼んであるから、フォーシーズンズに来てよ。とびきりお洒落してね。」
朝、家を出る前にそう言ったグクに首を傾げた。今日は特に何かの記念日という訳でもなくて、そんな風に畏まって誘われる心当たりがなかった。
まあ、ロマンチストな彼らしいのかもしれないと勝手に納得して、言う通り準備をした。
クロエのドレスに、グクがくれたブルーのボーイシャネルのバッグにルブタンのショートブーツ。ピアジェのローズのピアスに、カルティエのタンクを巻いた。
もう少しで付き合って3年が経つけれど、いつだってときめいてほしいし可愛いと思ってもらいたい。
グクからの愛は、全部私のものがいい。
フォーシーズンズのロビーに到着すると、ちょうどメッセージが届く。
最上階の1号室に来て。
てっきりディナーに来たものだと思っていたから少しびっくりしたけれど、言われた通りエレベーターで最上階を目指す。
キラキラと光るソウルの街並み。この国、この街でグクと出会って、恋に落ちて、一緒に過ごす日々はまるでロマンスのようで。
出会った時から大人気のアイドルだった彼は、それからもどんどん階段を登り続けて、今では世界的スーパースターになった。どんなに人気になって忙しくなっても、ずっと私を見失わずに、大事に大事に愛してくれる。
グクの言った部屋のインターホンを鳴らすと、すぐに出迎えてくれた。
部屋の中は真っ暗で少しだけ不安になったけど、手を包んだ温もりにあっという間に取り除かれた。
「迎えに行けなくてごめん。」
『ううん、大丈夫だよ。』
「綺麗だね、ユリ。」
『グクも、すごくかっこいいね。どうしたの?』
セリーヌのスーツに身を包んだグクは、ハリウッドスターだって敵わないくらいにかっこいい。
「目、閉じて?」
『え?』
「ね、大丈夫だから。」
優しく微笑む彼の言う通り目を閉じると、身体が宙に浮く。
『ちょっと、グク?』
「まだ開けちゃダメだよ。」
グクの首に腕を回して捕まると、堪えるように腕に力が籠る。
この人さえ居れば、どんな暗がりだってどんな道のりだって怖くない。不意にそう思った。
柔らかい所にゆっくりと降ろされて、両手を握られる。
「ユリ、」
『ん?』
「愛してるよ」
澄んだ甘い声、優しく唇に触れた温もり。
「開けていいよ。」
ゆっくりと瞼を開けると、沢山のキャンドルに灯された部屋。
そして、ネイビーのボックスを開けて私を真っ直ぐに見る愛しい彼。
「ユリ、僕と結婚して下さい。」
『っ…グク…』
いつか憧れだと話したハリーウィンストンのマイクロパヴェは、涙で霞んでもなお眩い輝きを放っている。
『…本当に、私でいいの?』
「ユリじゃないとダメなんだよ。ユリしか要らない。」
『っ…』
優しい声で紡がれる言葉はいつだって真っ直ぐで、苦しい程心に響く。