『……っ!』



黒いものに飲み込まれる感覚に慌てて意識を引き戻すと、見慣れた天井にほっとした。
力の入らない身体を起こして、額に滲んだ汗を拭う。
隣を見ても誰も居ない。少しの安堵感と、泣きたくなる程の寂しさ。

水でも飲もうかと寝室を出るとリビングの明かりが点いていて、無意識に髪を整える。



「ユリ?」


『あ、グク…』



キッチンで水を飲んでいると、ひょこっと顔を出したのはこの世で1番愛しい人。
だけど、上手く笑えない。あれは夢で、ちゃんと私は現実に帰ってこれたのに。



「顔色悪いよ」


『……』



私に近付いてくるグクに返事が出来ずにいると、優しく抱き締められる。
少し高めの体温に安心して思わず滲んだ涙を誤魔化すように、逞しい胸に顔を押し付ける。



「嫌な夢見た?」


『…うん。』


「ごめんね、1人にして。」



優しい声に必死に首を振る。
グクが悪い事なんてひとつもない。グクだけが私の光で、私の救い。
いけないのは、過去に縛られたままの私。

こんなに幸せなのに、まだ、



「苦しかったね。」



そっと頭を撫でてくれる手は、決して私を傷付けない。初めてそう信じる事が出来た。

グクを見上げると、眉を下げて私の涙を拭う。



『グク…』



精一杯背伸びをして、柔らかい唇にキスをする。支えるように腰に回った腕が強く私を引き寄せる。



『ん…、っグク、』


「ユリ、」



強請るようにグクを見ると、少し困ったように、だけど優しく笑ってキスに応えてくれる。
どんどん深くなるそれに意識がぼやけ始めて、必死で逞しい体にしがみつく。



『…ん、』