テニス部のメンバー全員で行うのは久しぶりだったテニスに、飲み会。それらを終えた俺はぐったりとベッドに沈み込んでいた。

 いざ一人になってみると・・・・・・・気持ちは穏やかではない。その上体調も心なしか優れないのだからどうにも報われないというわけだ。・・・・思ったよりも、疲れている。それも、脳が体を動かすことを拒否してるようにさえ感じるのだから相当なものだろう。

 要因は十分にわかっている。心に残る蟠りを誤魔化すために、少し飲みすぎたのだ。・・・それに加え、気の知れた仲、という要素を含むにしても・・・・・もう思っているよりも若くはないというのに・・・・・随分と無理をしてしまった。完全に俺の落ち度だ。

 楽しかったのならそれでいい、そういったいいわけが聞く年齢ではない。そう再確認したついでに溜め息をつくと・・・・・改めて例の件について考えることにした。

 例の件、というのは・・・・勿論みょうじさんとのことだ。
・・・・まず、誰にも公言していなかった俺の心境を見事にあてたのはやはり精市だった。
飲み会も終わり、皆それぞれが帰路につこうとした時だ。奴は後悔しているのか、と・・・ただ一言、俺だけに聞こえるようにそう言ったのだ。

 俺自身はうまくやったつもりでいたが、おそらくあの場にいた皆が気付いていたんだろうな。あの、みょうじさんとの妙な空気に。・・・・最も、赤也はなにも考えていない可能性もなきにしもあらず、という事だが。



 正直、最初は後悔なんてしていなかったさ。だけど違った。後日、姿をみせなくなったのを皮切りに、俺の脳内は徐々にみょうじさんに占拠しはじめたのだ。
はじめは罪悪感だけだったのかもしれない。しかし、それがどう変化し、いま、どんな想いを俺が抱いているのかを・・・・・俺はわかってはいないのだ。

 ・・・・あんな表情をさせてしまった事に罪悪感を感じているのは事実で、・・・・あの情景が忘れられずにいるのもまた事実。・・・・それに、テニスクラブでみたみょうじさんの姿。赤也によく似た彼の試合を食い入るように見ていた彼女の姿は、・・・・距離、というよりも、世界すら阻む壁をすら感じさせられたのものだった。


 弟に彼女ができた姉の気分、とはよくいったものだが俺の場合は根本が違う。なにもかもが・・・・違う。
 それなら、あの妙な感情にはどのような名前をつければいいのか、それがわからずにいる。極めつけには俺たちのコートをみる彼女の熱い視線すら、俺の脳裏からは離れそうにない。不可解な事と、憶測するに値しない、そんな出来事ばかりが積み重なって・・・・・やはり、結論はでない。

 ・・・・・休もう。考えるのも、よそう。今日が祝日でよかった。心からそう思う。すこし仮眠をとって、もしだるさがとれなければ薬を飲んで・・・・午後は昨日読めなかった本の続きを読もう。
一日の計画をたてればすこしは気は晴れるものだ。息をついて、もう一度目をとじると・・・・
 それを阻むかのように、枕元においた携帯がメッセージの受信を知らせた。
マナーモードにしておかなかったことを悔いながらも携帯をたぐりよせ、そうして・・・・画面をみるなり目を疑った。

 精市が画像を送信しました、という表示と共に立て続けになにか文章が送られてきたようだ。・・・・内容は、みょうじさんとデートなう、

 ・・・・・・・みょうじさんと、デート?
添付された画像を早速ダウンロードし、開いてみればそこにはバイキングとおもわしきケーキをみつめるみょうじさんを背後から撮ったものが画面にでかでかと展開された。

 ・・・・・・どうにも不可解な事ばかりが、おきる。
精市とみょうじさんがデート?・・・精市のことだ。有り得ないことはないが、いまいちどういう敬意でそうなったのかは予想もつかない。
そして、この件を境に、俺はいよいよ彼女の事を考えずにはいられなくなってしまっていた。"そういう"意味での好意ではなく、もっと・・・・保護者や、大人といった意味での感情。・・・・・だから、彼女を傷付けてしまう。
 それならば離れてしまわないといけない、そう、決めたはずというのに
・・・・・どうしろっていうんだ。




 それから、偶然居合わせたという丸井の撮影によるツーショットの写真が送られてきたのは幸村の報告から数分も経たない頃だった。
件名の幸村逮捕、に少しばかり笑みを浮かべながらも俺はゆっくりと目をとじ、そして・・・・意識を手放した。




(その後、みょうじさんが訪れる事になるのだがそれはまた別の話)

20131022

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