わたし、みょうじなまえが真田くんとお付き合いをはじめて三週間がたちました。
・・・・と、いってもあまり代わり映えのない毎日を過ごしていて・・・・・
第一、真田くんは相変わらずテニスに勤しんでいる。あの人たちには引退という概念がないんだろうか、だとか・・・そんなことを思ったりもするけど、テニスに向かう真田くんがすきだから、わたしはそれを邪魔したりしたくはなかった。
だから、
「・・・・断った!?」
「う、うん」
「マジかよ・・・・・」
「・・・・あんなに練習しとったのに、かわいそうにのう」
「練習?」
「なまえを誘う練習じゃよ」
その誘い、というのは昨夜、真田くんから届いたメールのことだ。(ちなみに、メールなのに"練習"をした理由はあえて聞かないでおく)
一緒に帰らないか、それだけかかれた真田くんらしい文面。それをわたしは迷わず断ったのだ。
もちろん嫌だったわけじゃないし、気持ちは十分嬉しかった。・・・・・きっとわたしが臆病なだけ、だ。
「なまえはそれでいいのかよ」
丸井くんの妙に真剣な声に、わたしは内心びくりとした。
わたしの気持ちを、真田くんのそんな姿を知っているからこそ、納得がいかないんだ。
仁王くんもそれに便乗するように、背は丸めたままだけど、その瞳はわたしをしっかり捉えている。
わたしは、わたしの臆病なこころを知られたくなくて、自然とふたりから目をそらしていた。
「まだ、慣れないだけで・・・・深い意味はないよ」
「でも!付き合えたの、あんなに喜んでたのにどうして!」
「だ、だから!恥ずかしいんだってば!」
「真田はお前のことを・・・・」
「わかってる!わかってるよ・・・」
「・・・・悪い、」
丸井くんはわたしの表情をみるなりなにか言いかけたことを飲み込んで、それから、黙り込んでしまった。わたしもごめん、と消え入りそうな声で一言呟いただけで、仁王くんはそんなわたしたちをじっと見据えたまま、時間がすぎた。
真田くんがわたしを好いてくれていることも、すこしは理解しているつもりだし、彼なりに付き合う、ということを考えてくれているのもしってる。
わたしが勝手に遠慮して、・・・逃げてるだけ。それに気付いて頑張って提案してくれたかもしれないってことだってわかってる。わかってるけど、
「無理、しとらんか?」
今までだまっていた仁王くんが不意にそういって、わたしも、丸井くんも彼をみた。
仁王くんの声は気遣うようなもので、やさしさを帯びていて、落ち着く。大丈夫だよ、なるべく平静を装ってそういったけれど、視界の隅にうつるふたりは益々眉を寄せた。
・・・・ふたりにはこんな顔をさせてばかりだ、そうおもうと余計にかなしくなる
「丸井くん、わたしのことも考えてくれたんだよね」
「・・・・当たり前だろい」
「一生懸命になってくれてありがとう、心配かけてごめんなさい」
「・・・・答えはでたんか?」
「がんばる」
謝罪の意味もこめて、丸井くんの頭をなでると瞬時に差し出される手。これがなんの意味だかわかっても、うれしくはないけど・・・・丸井くんらしさに声をあげてわらうと、不機嫌そうな声がかえってきた
・・・・生憎お菓子なんかもってないんだからしょうがない
だけど、仁王くんはまだ納得のいかない顔をしていたから、笑顔をみせてみるけれど・・・・ふい、と目をそらされてしまった。
あのひから、度々こんな調子だ
丸井くんは仁王なら大丈夫だっていうけど・・・・・彼の様子がすこしおかしいのは目にみえてわかる。でも、わたしがそれを気にするたびに"なまえは友達だからこれでいい、これからも仲良くしてほしい"って、わらう彼に、わたしはなにも声をかけずにいた。
「ふたりには幸せになってほしいなあ」
「なんじゃ急に」
「しかもなんだよそれ!まずはお前が幸せになってから言えって!」
わたしは大好きなひとと、こんなにいい友人がいるだけでしあわせだよ、って
いいたかったけど・・・恥ずかしいからやめておく。
いつかこの気持ちが伝わりますように。そして、ふたりが幸せになりますように
そう、心のなかでねがった
真田くんとのことは、本当にわたし個人の問題。
付き合えたことすら奇跡なんだから、真田くんに無理をさせてはいけない、そう思っているし・・・なによりも、真田くんの言う"傍にいてほしい"という台詞の意味がいまいちわからないわたしは、徹底的に身を退く、という選択肢を選んだのだ
二人と別れて、そんなことをつらつらと考えながら校門へ向かって歩いていた最中、わたしは異変に気付く。
あれは、
「みょうじ」
「・・・・真田くん」
「その・・・少し、いいか」
彼のかおをみたのは随分と久しぶりだ、
そう、思った
20130429
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