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両親が、離婚した。

いやまあ、落ち着け、いや落ち着いている。
少し昔なら兎も角、このH歴の日本──しかも東京に関して言えば、それはまあ よくあること 、、、、、、 ではある。

だから問題ない。
いや、問題はありまくりなんだけど、そこは重要じゃない。
問題は、私の住む場所だ。

このご時世に置いて、男性は異例なしに居住区を定められている。
イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク。
東京に在籍するためには、男性は中王区を囲むこの四大地区でのみ居住が許されているのだ。

だから男性が地区から違う地区へ勝手に引っ越しを行うことは許されない。
例えば転勤にしたって、各地区の役所を通して中王区役所の承認書を出してもらわなければすることはできないのだ。
まあこれは東京都内だけの問題だから、例えば大阪とか埼玉とか、県さえ跨いじゃえば問題はないんだけど。

──さて、私の問題。
それは、居住区を 差し替えられてしまった 、、、、、、、、、、、 ということだ。

両親の離婚の原因は、父の浮気だった。
同じ会社の受付嬢と四年前からこっそり愛を育んでいたらしく、なんとまあその受付嬢は妊娠までしてしまったらしい。
現在妊娠八ヶ月目で、既に安定期に突入。
新しい命に対してけじめをつけたいと言い、父は母に離婚を願い出たのだ。

──で、当たり前だけど母が大激怒。
そもそもかなりプライドが高い人だから、もうガチギレもガチギレ。
顔に泥を塗られたと怒り狂った母はそりゃもう莫大な慰謝料を父に叩きつけて、これを払ったら認めてやると離婚を承諾。
そしてまさかの一括払いで払われた慰謝料を確認した後、私を引きつれ、イケブクロディビジョンから中王区へと居住を移そうとしたのだけれど。
しかしそこでまさかの待ったを掛けられてしまった。

父が、私が中王区に行くことを拒んだのだ。

そもそも、中王区に居住する為には女と言えど資格を有していなければいけない。
場合によってその資格は変わるが、基本的には年収が一千万を超える女性にのみ許された特権であり、私の母は収入で居住区の資格を得ているタイプの人間だ。

しかし、私はそうではない。
無条件で母親と共に中王区に居住が許される娘は15歳までと決まっており、17歳の私が中王区に移り住むためには申請を受理してもらわなければならない。
そして、未成年である場合は仮に離婚関係であろうと、娘の居住の認可証を申請する為には肉親の男親の承諾が必要になるのだ。

夫婦の離婚が珍しくない今。
一度でも中王区に居住を移してしまえば、例え親であろうと父親が娘に会う可能性は無に等しくなってしまう。
だからこの制度は、女尊男卑の世の中に置いて、唯一男性が死守した"親"という権利であり、父はこの権利を守るために母が吹っ掛けた慰謝料を素直に飲んだのだ。
そして即決で条件をのみ指定された金額を払い込むことにより、"譲歩" の姿勢を見せたのである。

──あの時の母の顔と言ったら。
そして若い女に手を出した癖に娘まで欲しがる父の浅ましさと言ったら。

そのどっちもに板挟みになった私は、もはや自身の所在に対する決定権なんか失っていて。
ただ弁護士を挟んで罵り合う両親を見ながら、私この後どうなるんだろう、と我が身の儚さを他人事のように憐れんでいたのだった。

そして重ねに重ねた裁判所が叩き出した結果が、私の居住区の変更。
元のイケブクロディビジョンでなければ中王区でもない──ヨコハマディビジョンに、私のみ移り住むことになったのだ。

その理由としては、母は既に中王区に居住変更を済ませてしまっており、それを再度変更するとなると母の評価も下がるし更に再度監査を重ねることになりかなりの日数を必要とするから。
仮に母親と共に私が中王区に移り住んだ場合、区外の高校に通い続けることは法律的に認められない為、私の所在は完全に中王区になってしまう。

しかしそうなると、母が申し出た莫大な慰謝料を一括払いで払った父が、金と言うけじめをつけたのにも関わらず娘まで取り上げられるという状況が作り上げられてしまう。
そして、それは流石に憐れである最高裁のお達しが下りてしまったもんだから、この七面倒くさい結論に収まってしまったのだ。

結果として、母は中王区。
父は代わらずイケブクロディビジョンで浮気相手と再婚予定。
私はひとり、イケブクロの隣の地区であるヨコハマディビジョンに移り住むことで決着がついたのである。
しかも17歳という微妙な年齢であるということから、現在通っている高校から転校することなく、ヨコハマディビジョンからわざわざ一時間掛けて通うという狂気の沙汰。

現在の七時半起きからまさかの六時半起き。
前はそれでも余裕持っての八時登校だったのに、次からは余裕持っての七時登校。
いや落ち着けまだわからない、家をどこに決めるかで話は変わる。

──変わるん、だけど。
はあ、と息を吐いてややうんざりする心地で目の前のおっさんに視線を向ける。

感じが悪いのはわかってる。
わかってるけど、なんかもう、そうでもしないとやってらんないのだ。

「ううん……やっぱり時期が時期だし、しかも結構条件がキツいんだよねえ……」
「そこを……なんとか……」

そう、家。
17歳の現役女子高生である私は、まさかのひとりで現在引っ越し作業及び引っ越し先を決めているのだ。

マジでもう、いい加減にしてほしい。

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