「名前さん、明日非番ですよね」
「うん、久々だから何していいかわからなくなっちゃってる」
「……だったら俺と、」
* * *
翌日、シカマルは自分でも驚くほど早く目が覚めた。何せ今日はあの憧れていた名前と『2人きりで』会えるのだ。
名前は人気が高く2人きりで会う機会なんてないし、そもそも仕事のできるくノ一が故に休みも少なく、デートに誘う暇などなかった。
「(昨日の俺、よくやった)」
身支度をしながらシカマルは心の中で自分を褒める。
憧れていた名前に声をかけただけでも十分なのに、まさかデートまで漕ぎ着けるなんて!
鏡に映る自分を見ながら、シカマルは昨日の会話を思い出す。
『……だったら俺と、遊びませんか?』
『え、いいよ!楽しそうだし』
『ま、まじっスか』
やけにあっさりと受け入れられたが、名前さんは2人きりで会うということの意味を分かっているのだろうか。
しかしそんなことはどうでもいい。休みの日に名前さんと会えるという事実は揺るがないのだ。
「うし、行くか」
シカマルは珍しく鼻歌を歌いながら、名前との待ち合わせ場所へと向かった。
* * *
待ち合わせ場所に着くと、私服に身を包んだいつもより増して綺麗に見える名前が立っていた。
思わずシカマルの頬が緩む。
確か、こういう時は素直に可愛いと伝えればよかったはず。いやでも、俺がそんなこと言うなんて気持ち悪くね?
そんな葛藤を一瞬のうちにしながら、名前の元に近付いた。
「…名前さん早かったッスね」
「あ、シカマルおはよー!ふふ、なんだか楽しみでね。そう言うシカマルこそ、少し早めの時間に来てくれたみたいだけど?」
「た、たまたま早く目が覚めたんスよ」
「ふーん、たまたまねぇ」
名前の言うように、集合時間は15分後だ。
悪戯っ子のように笑う名前の顔を直視できないでいると、シカマルの背後から「あれー?」と気の抜けた声が聞こえた。
嫌な予感がする。
しかしそんな思いにも気付かず名前が嬉しそうに声の主の名を呼んだ。
「カカシさんじゃないですか!」
「名前おはよ、相変わらず今日も可愛いね」
「またまた〜!」
予想は当たった。よりによってカカシに出会うとは。
シカマルは知っていた。カカシは自分と同じく名前に好意を抱いているということを。
しかし、あいにくここは定番の待ち合わせスポット。もしかしたらカカシも誰かと待ち合わせをしているのかもしれない。
わずかな望みにかけて、シカマルはカカシに話しかけた。
「カカシさん、こんなところで何してるんですか」
「ん?久々に休みをもらったけどこれといった予定もなくてね。散歩よ、散歩」
「散歩、ねえ…」
「なーに?まさか俺がわざわざ邪魔しに来たとでも言いたいの?」
そんなことを言うくらいだ。この人は間違いなく俺と名前さんがデートするということを知っていたんだ。
ぬかった。いつだ、いつ察されてしまったんだ。俺が浮かれてチョウジに今日のことを話したとき聞いてたのか?それとも柄にもなく鼻歌歌いながら歩いてたせいか?
明らかに顔を引きつらせるシカマルに対し、カカシは涼しい顔で名前に絡んでいる。
「名前〜ダメじゃない。俺以外の男と2人きりなんて、俺妬いちゃうよ」
「変なカカシさん〜!」
そもそも付き合ってもねーだろ!という言葉を飲み込み、シカマルはケラケラと笑っている名前に行きましょう、と声をかけた。
「もう行っちゃうの?あ、そうだ。俺暇だからさ、よかったら3人で遊ばない?」
「は?なんの冗談っスか。名前さん、早く行きま…」
「いいですよー!人数多い方が楽しいし!ね、シカマル」
「……そうっスね」
そんなキラキラとした目で言われたら断るわけにはいかないだろ…
カカシの作戦に負けてしまった、そしてやはり名前にデートだと伝わっていなかったことに気付いたシカマルはガクリと肩を落とした。
* * *
「ふ〜!買った買った〜!シカマルもカカシさんも付き合ってもらってありがとうございました!」
あの後、名前の要望で服を見にいった3人。試着した名前に見惚れたり名前に服を選んで貰ったり、カカシの存在は気になりながらも、思っていたより楽しめたシカマルはこれはこれでいいか、と思い始めていた。
休憩がてら入った甘味処で名前の隣をゲットすることができ、もうそれだけで十分だった。
「やっぱり名前は何着ても似合うね。センスも良いし、ホント可愛いよ」
「ふふ、カカシさんはいつも褒めてくれますよね。お世辞でも嬉しいです」
「俺はお世辞は言わない主義なんだ」
「そ、そんな…なんだか恥ずかしいんですけど…」
十分なはず、だった。しかしこんなイチャつきを見せられるのはたまったもんじゃない。シカマルは負けじと会話に割り込んだ。
「でも、俺も名前さんは可愛いと、思います…」
カカシの真似をして褒めて見たはいいものの、普段言い慣れない言葉につい照れてしまった。
そんなシカマルの様子をカカシがニヤニヤと見ている。
「なーにシカマル。そんなこと言うなんて珍しいね。俺に感化されたかな?」
「……俺だって言いたいことは言いますよ」
「面白くてついからかっちゃった、そんな睨まないでよ。ごめんごめん」
カカシにからかわれるのも仕方なかった。カカシは名前よりも年上で余裕もある。そしてなにより経験の多さが違う。名前が人気なように、カカシもくノ一からの人気が高い。悔しいが、正直2人が付き合うとなると里中がお似合いだと祝福するだろう。
それでも、あきらめたくはなかった。
「…名前さん、今日は楽しかったです。でも、もしよかったら今度の休みは2人きりで会いませんか」
自分なりに勇気を出した結果だった。
名前はニコリと笑い隣に座るシカマルの顔を覗き込む。
「うん、もちろん。人数多いのも楽しいけど、今度は2人で行こうね」
「……ありがとうございます」
名前の答えを聞いたシカマルが安心からか少し笑うと、途端にカカシが焦り出した。
「ちょ、ちょっと名前!男はオオカミなんだよ?いくらシカマルのことを"年下"で"弟みたい"って思ってるからって2人きりなんてそういうのダメだよ!」
「カカシさん、みっともないっスよ。それ言うならカカシさんだって"年上"で"お父さんみたい"って思われてるかも知れないじゃないですか。あ、もしかしたら"親戚のオジサンみたい"かも?」
「うっ……言うねシカマル」
「今日ぜーんぶの出来事含めての仕返しっスよ」
「ふふ、カカシさんとシカマルは冗談言い合えるほど仲良しだったんだね。今日は3人で会えてよかった!」
相変わらず純粋な名前に、シカマルもカカシも思わず毒気を抜かれ笑ってしまった。
「…まあいっか。シカマル、次は譲るよ。せいぜい頑張ってね」
「随分余裕っスね」
「俺は本気だからさ、ライバルなら本気でぶつかってほしいと思っただけ。負ける気はないし」
「そんなこと言ってられるのも今のうちですよ」
「それはシカマルもね。俺は次の休みに、なんて悠長なこと考えてないかもよ〜?」
「……のぞむところだ」
今すぐにでも
この気持ちを伝えるよ
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るみさんへ捧げます!
三万打記念リクエストありがとうございました〜!
カカシとシカマルに取り合われる、というなんともおいしいリクエストを頂いたのですが、なんだか気持ちが先行しすぎて書きたいことも書ききれず…!悔い…!
オチお任せとのことだったので、気持ちシカマル寄りになりましたが私はカカシ先生も大好きなのでどっちも名前さんと幸せになってほしいという想いでいっぱいです…おかげでどっちつかず…
カカシvsシカマルという構図が素敵すぎると気付いたのでまたshortで別の取り合い小説を書いてしまうかもしれません(笑)
その時はるみさんから影響を受けたのだなと笑い飛ばしてやってくだせぇ…
最後になりますが、改めてリクエストありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします*