「そもそものはじまり」
「みお、今日も好きじゃ」
「は?俺のが好きだって!」
「いや、はい。もうわかったから。部活しようね」
「仁王!丸井!みおから離れんか!毎日毎日いい加減にしろ!」
真田が怒鳴るのはもはや習慣になっている。
部活のスタートは真田の怒鳴り声が聞こえてからだと言っても過言ではない。
毎日毎日の仁王とブン太からの求愛。
かれこれ2年も続いている。
そもそも、私が精市を信用しすぎていたことからすべてがはじまった。
私はただ何も考えずにエスカレーター式でこの高校に入学し、幼馴染の精市が入るっていう理由だけで男子テニス部のマネージャーになった。
中学では吹奏楽部に入っていたけれど、高校で続ける気は別になかった。
周りのみんなみたいにコンクールに情熱を傾けていたわけでもないし、中学のころから精市のおかげでテニス部のみんなと仲良かったってのもあったし。
実際マネージャーとしての学生生活は非常に楽しく、充実している。
そんな中、高校1年のとき、それまで普通に友達だと思っていた2人から急に好きだと告白をされた。
私は悩んだ。
贅沢な悩みだと人々は言った。いや、それは確かに私自身認める。確かに贅沢だ。
しかしあいにく私はまだ恋愛というものに興味がなかった。2人がいくら私を好きでいてくれても、どうしていいのかわからないのだ。
もちろんその想いは2人に伝えた。
付き合ったりすることはできないし、あなたたちの気持ちに応える事も無理だ、と。
そこで諦めるかと思いきや、2人はこう言った。
「いずれ好きになってもらうから大丈夫」
あまりにもポジティブな答えだった。
その言葉をきいて、私はどうすればよいか精市に相談した。
「ほっとけばいいんじゃない?」
その一言を真に受けてしまった私は言われたとおり放っておいた。
いずれなんとかなるだろうと思って。
これがいけなかった。
むしろ、悪化した。
精市の言葉を信じた私が馬鹿だったのだ。
仁王とブン太はしぶとかった。あまりにもしぶとかった。
何度も言うが、そもそも、私が精市を信用しすぎていたことからすべてがはじまった。
これは私が高校を卒業するまでの残り1年間の学生生活の話である。
『そもそものはじまり』
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