「毎日こうなんです」


私は両親が海外転勤というなんとも都合の良い環境にいるせいで、高校からは1人暮らしをさせてもらっている。
1人暮らし、門限もないし怒られることもない。なんとも天国。な、はずなのだ。華の女子高生にとっては。


まず、登校するために毎朝早く起きる。これはまあ慣れだ。1人でも何の問題もない。
朝ごはんの用意をする。これも1人分ならなんてこともない。


「1人分なら」ね。


朝6:30。いつものように起きる。
その数分後、いつものようにチャイムがなる。ほうっておいても、私が対応するまで押し続けるため、出るしかない。


「…はーい、今日もいらっしゃいませー」

「おはようみお。今日もかわいいな!」

「外でそんなこと大声で叫ぶな、近所迷惑」


朝からテンションマックスなこいつ。丸井ブン太。
この男は毎朝毎朝やってきては私に朝ご飯をねだる。初めて来たときは、兄弟の相手で大変なブン太のお母さんのことを考えて、自分は負担になりたくないからとかなんとか言ってた気がする。まあ一回くらいならいいかと優しさを見せたのが間違いだった。


『みお料理うまいな!毎日食べたいくらい!』

『ほんと?それはちょっとうれしいかも。たまにだったら作るよ。』


ニコニコしながらそんな会話をしたのを覚えている。


しかし次の日からもこいつは普通に来た。


今ではブン太が朝やってくるのが普通のことになってしまった。


「今日の朝飯なに?」

「今日はハムエッグにトースト、モーニングコーヒーです」

「おう!おしゃれな朝だな!いつもサンキュー!」

「…ん、どういたしまして。簡単なのでごめんね、それじゃあいただきます」

「いただき!」


もぐもぐとおいしそうに食べるブン太。たいしたものでもないのに大げさに喜ぶ。
結局ブン太の分も作っちゃうのは、少し嬉しいからなのかもしれない。まあ1人で食べるよりは、楽しくていいかな。
食べ終わった後は、きちんと食器を片してくれる。こういうところは本当にえらいと思うんだけどなあ。


「よし、ごちそーさん!学校行こうぜィ!」

「はいはい、ちょっと待って」


急いで制服に着替え、2人で外に出る。


「なんかさーこうやってると付き合ってるみたいだよな」

「はあ?」

「一緒に朝ごはん食って、一緒に登校。俺は幸せモンだー」


確かに傍からみるとそうなるのかな。でもあくまでブン太は友達だ。
それ以上でもそれ以下でもない。本人にもいつもそう伝えている。


「ブン太、だから私付き合うとかそういうのは…」

「わーかってるって!今はまだ、な。いつか好きにさせるって言ってるだろィ?」

「…そのポジティブさは毎回尊敬するわ」



いつも笑顔を絶やさないブン太と過ごす朝は、私の元気の源なのかもしれない。



そう思いながら今日も私たちは朝練へ向かう。



朝日が2人の影を地面に映し出す。
昨日より、今日は少しだけ影同士の距離が近い。

『毎日こうなんです』

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