世間はゴールデンウィークを迎えていた。もちろん、桜花高校も連休となり、その分の課題もたんまりと出された。
通称、妖花の怪異から自然と仲良くなった7人は雷鳥の家に遊びに来ていた。雷鳥の実家、南原家は武道に通ずる家柄で、築何百年という家と土地に、馬や犬など動物も飼っている所謂金持ちだ。
初めてあがる燿夏と守羅、そして姫夏も興味深そうに辺りをキョロキョロと見渡していた。
「凄いですね」
「せやろ、向こうに練習場もあんねんで」
「そう言えば、雷鳥さんたち空手とかやってるって聞いたんですが」
「そうそう、うちは武芸十八般、昔の侍とか忍者がしてた武芸を全部こなしてる。一火は柔道、空手、剣道もしとるし」
「僕は空手、剣道、弓道」
「私もね、空手と弓道習ってるんだ」
「へ、へぇ……」
「そんなビビらへんでえぇんやで? 素人ちゃうんやから、手加減はできるしな」
つまり逆をとれば、手加減しだいで人を殺せるということになる。南桜中出身よこの4人だけは絶対に敵に回してはいけないと察した燿夏と守羅だった。
一行は雷鳥の部屋に向かう途中、庭で素振りをする男に声をかけられた。
「お、来とったんかいな」
「師範」
門下生である奏夢、一火、優依は男を目の前にすると礼儀正しく頭を下げる。男は何となく雷鳥に似ていた。
「そっちの3人は? 」
「僕のクラスメイトの、桜苑燿夏と、桜苑姫夏、そして佐竹守羅です」
姫夏も一応桜苑家に居候という形で現在通している。そして偶然にもクラスも3人とやはり同じだった。
初対面の3人を見た男――雷鳥の父、雲雀はにかっと笑えばヅカヅカ近づいてくる。そして先程まで竹刀で素振りをしていた大きな手でわしゃわしゃと頭を撫でたのだ。
「奏夢の友達か! 雷鳥共々よろしゅうな! 」
頭を撫でられた3人はポカンと雲雀を見ていたが、ぺこりとお辞儀をした。そしてその場を去り、雷鳥の部屋に入る。
部屋はきちんと整理されているが、高校生らしくない。マンガや好きなアーティストのポスターなど、趣味の類が一切置いてない。その代わりに、刀やくないなど、様々な武器が置いてあった。
「雷鳥サン、マンガとか買わねぇの? 」
「んー、マンガは好きやけど、別に買うほどでもなかし」
「好きなアーティストとかは? 」
「おるけど、スマホに入れて聞いてるだけくらいやな。熱中するほどでもないんや」
淡々と答えられ、逆に反応に困る守羅。それを聞いていたのか、幼馴染組は苦笑する。
「雷鳥くんってね、割とこういう人なんだよ」
意外な一面を発見した日だった。
午前中に課題をし、昼食は雷鳥の祖母、すずめお手製のおにぎりやおかずをいただいた。
「みんな育ち盛りなんやから、いっぱい食べてぇなぁ」
背が小さくて可愛いおばあちゃんだが、雷鳥曰く「本気でキレたら背負投してくる」らしい。やはり武道を進む人はそうなのかと恐ろしく感じた。
午後からは幼馴染たちによる武道大会が始まった。もちろん、優依も得意の空手と弓道で参加する。
雷鳥以外は久しぶりと本人達は言っていたが、全くそうは見えなかった。初心者である燿夏たち3人はおぉーっと拍手をしていた。
「燿夏くんやったっけな」
ふと背後から気配なく声をかけられる。ビクッと震えながら振り向くと、そこには雲雀が面白そうに立っていた。
「そんな驚かなくてええやんか。なぁ、あんさん達サーカスとか興味あらへん? 」
「サーカス、ですか? 」
「サーカス……」
姫夏はどこか興味深そうに差し出されたチラシを覗き見る。
「いやぁ、桜花市ってなかなかそういうのこんへんからなぁ、雷鳥も飛鳥も、行ってみたい言うててな?あ、学生は安ぅされてるみたいやし、うちのと一緒に行かへんか、って声かけてみただけや」
飛鳥というのは雷鳥の弟で、桜花高校1年生らしい。まだ会ったことがない。
「姫夏、行く? 」
姫夏に問いかけるとこくんと頷く。
「なら涼夜も誘うか」
「俺も、行きたい」
守羅も珍しく反応する。姫夏は「珍しいな」とボソリと呟いた。
「誘えるやつ全員で行こうか」
雲雀は雷鳥ー、3人行くってさーと声をかけると、気を抜いていたのか一火に背負い投げされ、一本取られてしまった。
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