「優依ちゃんが生徒会室におるって」
「なら今すぐ行かないと」
「せやけど、なんで知っとるんやろ。あの二人は3階におるはず……あ、」
「何か思いついたのか? 」
「なんで電波通っとんのにLimeせんかったんや!うちのアホ! 」
あー、と頭を抱え込む。守羅はふと自分のスマホを見る。Limeに登録した燿夏から1件のメッセージが届いていた。
――やっぱり様子がおかしい。守羅たちも気をつけて――
自分たちを心配してくれる燿夏のメッセージにホッとした守羅はありがとうというスタンプを送って閉じた。
「先に生徒会室行ってからやな……っ!? 」
「どうし……ひっ!? 」
2人は背後からひんやりと流れてくる空気の違和感に思わず振り向いた。そこには何故か黒い冬服のセーラーを着たショートヘアの少女が立っていた。眠そうに目をこする。顔色は青白く、まるで死人のように見える。左手にはボロボロのクマのぬいぐるみが抱かれていた。
「ねぇ、さっきドンドンうるさくしてたのあなたたち? 」
少女ら可愛らしい声で問いかける。吐く息は冷たい。2人は必死にぶんぶんと首を振る。雷鳥は怪我をした右腕を見せる。
「これの処置に来たのは確かや。せやけど、ドアを叩いたんはうちらじゃない。信じてくいやん……」
「そう。こんどわたしのねむりをさまたげたら、ころすからね」
「……おまえは……」
「わたしは、保健室の眠り姫ってよばれてるの。ねむることがだいすきだから、もうさわがないでね。けがしたならべつにきてもいいけど」
少女はふぁぁと一つ欠伸を零せばふわふわと1番奥のベットへと消えていった。不可思議で非現実な出来事に呆気に取られていた。
「おやすみぃ……」
「……なぁ、あれって……」
「人間じゃないことは確かやな……」
「早く生徒会室に行かねぇと」
「せや、生徒会室は1階の奥や」
雷鳥は優依にLimeを送る。
――生徒会室におる?――
するとすぐに「うん、すごく怖い」と返事が来た。
一人にしておけない。2人は走って生徒会室に向かった。
生徒会室前、雷鳥は優依にLimeを送る。すると鍵が開き、小さな人影が雷鳥に抱き着いた。
それは確かに優依だった。相当怖かったのか震えて泣いていた。
「すまんな、怖かったやろ」
「ううん……来てくれてありがとう、雷鳥くん」
目の周りを真っ赤にして泣いている優依の頭を優しく撫でる雷鳥。守羅は居た堪れないのか、そっとキレイに畳まれたハンカチを差し出した。
「ん……」
「ごめんね、守羅くん、だよね」
「そうだけどよ……」
「洗って返すね」
優依の顔にやっと笑顔が戻ってきた。雷鳥は真剣な表情でゆっくり問いかける。
「一火はどこにおるか知らん? 」
「……分からない。屋上にいるんじゃないかな、先に帰ってていいよって私は言ったけど」
「アイツが優依ちゃん置いて帰るわけなかしなぁ、急用もなさそうやったし」
「一火にLime送ったの、でも返事がなくて……」
「1階も危なすぎる。よう分からんバケモンしかおらんし……」
優依と合流出来たことに安堵するが、1階には守羅たちの見た焼け焦げた人間と、保健室で見た何かを引きずるもの、ここにいることすら危うい。とりあえず3人は2階に戻ることに決め、廊下と階段を駆け抜けた。
*
一方、その頃燿夏と奏夢はというと。
「……隼人さん見つからねぇ」
「というか帰ったんじゃないかって思い始めたよ……」
3階の3年のクラスを探しているが一向に一火の姿を見つけることが出来ずにいた。
「あ、これ雷鳥さんのだ」
一火たちのクラスで見つけたものは、奏夢曰く雷鳥のものだという。
「え、竹刀? 」
「ほら、ここに名前書いてるだろ? 」
「あ、本当だ」
確かに南原 雷鳥と記されていた。それ以外の収穫はなさそうだ、と教室を立ち去ろうとしたその時だ。
バン!
激しい音に2人は音のしたところを振り向く。そこは掃除用具入れだった。1回だけではない。何度も内側から叩かれている。招待の分からないものに怖気ずきそうになったが、奏夢は雷鳥の竹刀をグッと握りしめては掃除用具入れに近付き、一息吐き出すと、思いっきり開けた。
「えっ」
中に向かって竹刀を向けた奏夢は目を丸くする。燿夏も気になったのか、奏夢の元に駆け寄った。
掃除用具入れの中に入っていたのは、縄でぐるぐる巻きにされ、ガムテープで口を塞がれた状態の隼人一火、本人だった。
予想外の展開に燿夏はガムテープをとりあえず外した。すると彼は怒りに任せて叫んだ。
「雷鳥のやつ! あいつどこにいやがる! 」
「えっ、どういうこと、ですか」
「落ち着け、一火。動くと解けない」
一火のキレた顔と声色にビクつく燿夏に対し、奏夢は慣れた表情で一火の拘束を解いていく。
やっと拘束から解放された一火は背伸びをしたり、関節をボキボキ鳴らした。
「んー…はぁ、ったく、悪い冗談だっつうの……」
「あの、何があったんですか」
「あ? あー……お前は確か……桜苑だったか」
「は、はい……」
「一火、あんまり威圧かけると、失神するからやめろ」
「わりぃ……。俺は優依が生徒会室でやる事があるって言ってたのを聞いてたから、ずっと待ってた。そしたら……」
『一火』
『あ?雷鳥お前、部活じゃなかったのかよ』
『早く終わったんや、それより一火』
『な、がはっ! 』
『しばらくねんねしとき』
「ってな風に、突然それで殴られて……」
「なぁ、一火」
「あ?」
「雷鳥さんがお前にそんなことすると思うか? 」
「……」
「少なからず、"僕らが会った雷鳥さんは本物だった"」
「……どういうことだ」
「僕らは情報屋、柊に似た化け物のようなものに会った。あれは柊じゃない、そう思う」
「……とりあえず本人に話を聞くのが早いってことか」
「気をつけてください。この学校は今普通じゃないんです」
「んなことは分かってる。何となく、嫌な空気が流れてるしな」
一火の眉間にさらにシワがよる。恐らく彼の頭の中は雷鳥のことと、彼女の優依の安否であろう。
ピロリーンと音が鳴る。奏夢のスマホから鳴ったのだ。
――優依ちゃん、無事見つけたで――
――こっちも一火捕獲した――
――捕獲てwwwなんや、動物かいな。2階におっで、気ぃつけてきぃな――
「優依さん、無事見つかったらしい」
「! 本当か」
「僕らの教室にいるらしい。行こう」
3人は3階から階段を降りた。だが、
「あれ? 」
2階の2年教室かと思いきや、3年のプレートがかかっていた。
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