オートマチックなる青年

「オレ仕事でいないから。大人しくしていなよ」

そう言って彼は本業である暗殺業に向かった。戻るのは長くて2〜3日であると聞き、短い期間ではあるもののイルミさんがいないという現状はわたしにとってたまらなく最高であった。何せ、好き勝手人の血液を貪る彼が居ないのだからわたしは物凄くご機嫌だった。とはいえ、わたしがこの屋敷から抜け出さないように監視役として執事の一人が傍についている。たまに執事の視線がぴりぴりと肌に刺さっていたいのは、まるで貴方の好き勝手にはさせない。と遠回しに言われてるようだった。

しかし、今日はやけに静かである。それもそのはず、あの母親がいないからだ。あの人が留守なだけで、こんなにもここは静かなんだなとキッチンを借りて紅茶を淹れていた。

「あ、お前。兄貴の」
「君は…?」

ポットに入った温かい紅茶をカップに注いでいると突然、声を掛けられる。
自分よりもいくつか幼い、銀髪で釣りあがったような猫目が特徴的な男の子だった。

「オレ?オレはキルア。お前あれだろ、えーっとナマエ」
「あ、覚えててくれたんだ…」
「まあね、兄貴が相当気に入ってんだもん。嫌でも覚える」
「キルアくんは何してたの?」
「修行だよ。さっきまで、電撃浴びてた」
「は?」

電撃を浴びてたなんて話をナチュラルにする彼に腑抜けた声が漏れる。そういう拷問を受けた時の為なんだろうけど、わたしよりも幾つか幼い彼を見て唖然としてしまった。

「なにその顔、当然だろ?」
「いや、…普通は電撃なんて浴びないんだよ」
「ふーん」

わたしの様子なんてお構いなし。と言ったように喉乾いたーなんて言いながら冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してはコップに注いでいく。それを口にしながら、彼はまたわたしへと視線を持っていくのだ。

「ナマエって、極上の血なんだろ?チョコロボくんより美味いの?」
「い、いや、自分じゃ分からないけど…」
「そっか…んじゃ、確かめてみる?」

さっきまで、少し離れた距離でオレンジジュースを飲んでいたはずのキルアくんが一瞬にして、距離を詰めてきた。12歳くらいだというのに随分と整った顔をして、変に意識してしまった。

「ずっと、気になってたんだよね…でも、兄貴が邪魔で近付けなかった」

手を掴まれるとそのまま、キルアくんの口元に指先が触れる。かすかに空いた唇からはしっかりと牙が生えていて、嫌でも彼が吸血鬼なんだと思い知らされるのだ。小さな舌が指に触れる。12歳とは思えない色気に頬が熱くなっていく。

「ガキ相手になに、赤くしてんだよ。もしかしてお前ってヘンタイ?」
「なッ…!!」

何てことを言うんだ!このおませな坊やは。
怒ろうとした矢先、指先にぷつりと牙が突き刺さった。そのまま、傷口から流れる血を彼は喉に流していく。

「っ…、」
「あっま……ふーん、悪くないじゃん……なんて顔してんだよ。執事に見られてるぜ?」

少量の血を接種しては満足したようで、手を開放させられる。彼に噛まれた指がやけに熱くてこんな子ども相手に少しでもドキドキしてしまった自分が恥ずかしかった。しかもそれをばっちりと執事に見られていたのも知っている。
吸ったら吸ったで満足したようで、キルアくんはいつの間にかキッチンから消えていた。

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むにむに。