※過去話
※捏造しかない
※不完全燃焼
「…あ。」
「……」
担任に呼び出され教務室に行った帰りのこと。ふと窓の外に目を向けたわたしが捉え (てしまっ) たのは、中庭のど真ん中で鳶に餌をやる、いつかの「後輩くん」の姿だった。
向こうも何かしら思うところがあったのか、わたしを見つけるや否や視線をこちらに固定したまま、口を「あ」の形にして一時停止している。
──この時間は絶賛部活動中のはずなんだけど。
中庭への入り口の扉に手をかけると、後輩くんは開けっぱなしだった口をようやく閉じた。
「こんにちは、先輩」
「こんにちは。……餌付けダメ、絶対」
「見逃してもらえませんか」
「それについて明確な返事はできないけど、もうしないって約束するなら考えないこともないよ」
「…」
後輩くんは浅いため息を吐くと、鳶を空に放った。羽ばたきの音が妙に大きい。図鑑でなんとなく知ってはいたけど、実物を近くで見るとやはりでかい。思わず後ずさった。
「駄目って言っておいてなんだけど、すごいね」
「昔からああいう動物に好かれやすいんです。逆に猫や犬は逃げられてしまって…」
「そうなんだ」
──なんだそれは。ますます意味がわからん。
「先輩はもう帰りですか」
「へ? ああ、うん」
「じゃあ送ります」
「え……。うん、え?」
どうしてそうなる。
「ていうか部活は?」
「部活は……今日はお休みです」
「ちゃんとわたしの目を見て話しなさい」
「……」
この後輩、360度どの角度から見ても清純そうな見た目なのにやることが完全に不良のそれである。
「うん、まあ、いいけどさ…」
「じゃあ僕鞄取ってくるので、玄関集合で」
「りょうかい」
「……先に帰ったらだめですよ?」
「しないよ、そんなこと」
* * *
「え、先輩一人暮らしなんですか」
「うん。両親は仕事で海外行っちゃってるから、実質ね」
「…危機感が足りません」
「そう、だからね、一応セ◯ムしてるアパートに住んでるんだよ」
「…」
「不満そうだね…?」
「いえ、…信用に足るかどうかわかりかねるな、と。僕の家は身内の人間が警備をしているので」
「へ、へぇ、すごいね」
──どんな家だ!
「やっぱり今日は付いてきてよかった。先輩、これからは1人の時僕が送っていきます」
「!? な、なんで!」
「先輩を守るためですが?」
「いいよ、しなくて!」
いるかも分からない犯罪者のために彼がそこまでする理由がわたしにあるとは思えない。
…だって、会ってまだ日も浅いのに。
お互い名前も知らない程度の仲なのに。
どうしてそこまで気にかけてくれるのだろう。
「…理由ならありますよ」
「え、?」
ひゅう、と冷たい風が吹き抜ける。
「僕は先輩の────」
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