「ぬし様!お帰りの際はててを呼んでくださいとあれ程……、っ!? その御仁は!?」
「学校の先輩」
「初めまして…」
「これはどうもご丁寧に…ではなくて! ぬし様これはどういう、」
「遊びに来てもらった」
「あそ…、…!?え、ええ〜…!?」
困惑した様子の着物姿の女の子に、思わず後輩くんに耳打ちする。
「ちょ、ちょっと、妹さん困ってるよ」
「大丈夫です。あと妹ではないのですが…」
一体何の問題があるのか分からないという顔の後輩くん。
ていうか妹じゃなければなんなのか。
「てて」
「は、はいな」
「先輩は “大丈夫” だから」
「! …そのお言葉、信じてよろしいのですね?」
「うん」
ててちゃんはまだ何かを探るように目を泳がせていたけれど、彼のその言葉に肩の力を抜いた。
というか、「 わたし 」が「 大丈夫 」 って、どういう。
「お客様、先ほどの非礼をお詫びします。私は三海家の当主様に仕える白砂山ててと申す者にございます」
「どうも、わたしは──」
「いえ、お名乗りいただく必要はございませんゆえ、ささ、どうぞこちらへ」
ててさんは旅館の女将さんよろしく礼儀正しくわたしと後輩くんをエスコートしてくれた。どう見ても自分より年下の女の子にこんな風に扱われるのはどうもむず痒く、部屋に到着するまで落ち着かなかったのだが、三海くんはこれが当たり前だと言わんばかりに涼しい顔をしていた。
一体普段からどんな暮らしをしてるんだろう。
「ててさんは三海くんの親戚?」
「親戚というわけでもないんですけど…、祖先同士が主従関係にあったみたいで。それ以来ずっと子孫がそれを保ち続けてるみたいです」
「へえ」
「ぬし様、本日は旦那様も奥様もお帰りが遅くなられるとのご連絡が御座いました」
「…。わかった」
「?」
──なんだろう、今……
「お客様。こちらへどうぞ」
考え事をしている間に目的地に着いたらしい。恭しく頭を垂れるててさんにお礼を言うと、彼女は幼い顔を綻ばせた。
「どうぞ、ごゆっくり」
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