泡沫

0-1


「こちらB班!!こちらB班!!クソッ!無線が使えない!」
「班長!やはり向こうの扉も開きません!」
「制御装置がハッキングされてる!」
「もう残り時間がないぞ!!」
「大丈夫、もう取り返しました!とびら開きます!みなさん退避の準備を!5…4…3…2…1…走って!」

 掛け声に倣って開いた扉から全速力で駆け出す。少し走ったところで爆発音が聞こえ、爆風ともに砕けた壁やガラスが飛んでくる。
 皆必死で逃げているなか、ふと隣を走る同僚にめがけて大きなガラスの破片が飛んでくるのが見えた。

「危ない!……っぁ…」
「みょうじ!?おい!大丈夫か!」

 咄嗟に同僚を突き飛ばしたが、その代わりに自分がガラスの前に踊り出たことになってしまった。鋭い痛みが走ったと同時に見える、焦った同僚の顔…あぁ、無事で良かった…そう思いながらも声は出せない。
 事態に気付いた班員がこちらに寄ってくるのを横目に、私は意識を手放した。



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「大丈夫ですか?」
「ぇ…」

 声をかけられてハッと目を覚ました。目の前には随分と顔の整った男性の姿。

「ずっと動いてなかったんで…具合でも悪いですか?」
「あ…あーいや、大丈夫です。ちょっと疲れて寝ちゃっただけで…心配かけてすみません」
「それなら良かった、だんだん冷えてくる時間なので。女性は身体冷やさないようにしてくださいね」
「ありがとう…ございます」

 この人めちゃくちゃスマートだな…そんな感想を浮かべながら、だんだんと意識を覚醒させた。目の前の男性はお友達に呼ばれたようで、「それじゃ!」というと去っていった。
 駅で寝てしまうとは…どれだけ疲れていたのだろう。と自分に呆れてふとおかしなことに気が付く。駅で、寝ていた…?

 さきほどまであるテロ事件の捜査で大変のことになっていたはずだ…部屋に閉じ込められてなんとか脱出して…それまでいた部屋が爆発して…飛んできた大きなガラスから同僚をかばったはず…。あの痛みは忘れられない。人生で一番痛かった。あれが夢なわけがない…


ーーじゃあなんで私はここにいる?


 ハッと顔を上げて、駅の名前を確認する。

「…うそでしょ」

 見上げた先には"米花"と書かれた看板。そこは知っているけど自分がここにいるハズのない地名…名探偵コナンの地名だった。

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