社会人の闇





仕事でミスをした。


身に覚えのないありえないミスだった。誰かに仕組まれていたことを突き止めた時にはすでに、何も言い訳のできない状況が出来上がっていた。


黒幕は目の敵にされてた女上司で、多分理由は私が気に食わなかったとかそんなとこ。
今更になって媚びとけばよかったと後悔してももう遅い。従順な取り巻きを従えて、彼女の意見はまるでハートの女王のように、白い薔薇を赤く塗らせるのだ。


ここのところは後処理に追われに追われて毎日終電だったけど、それも今日で終わり。新卒で入って今日までの3年半。がむしゃらに働いてきた結果がこのざま。
本日付で自主退職。


「しんどいなぁ…」


直属の上司や後輩は最後まで心配して引き留めてくれたけど、過半数はそうはいかなかった。職場は針のむしろ。

責任のとり方なんて、自分の身以外差し出せるものがない。辞表の書き方をネット検索するまでにそう時間はかからなかった。



人通りの途絶えた道を気だるく歩いていく。

さて、明日から何をしよう。

再就職は決まっていない。有給消化して、幸いにも若干の退職金が出て…そうしてはれて無職だ。
明日も明後日も明明後日も、行かなきゃいけないところなんてない。清々しさと、社会のレールから外れたという焦燥感。
バイトだなんだと大学時代から働きまくってたから、こんなに予定のないのは高校以来だ。って言ってもまぁ、気持ちの面では高校の比じゃないくらい鬱々としてるんだけどね。


ひとまずは時間が無くてできなかったことをしよう。
部屋の掃除もしたいし、寝具も新調したい、録画したままだった金曜ロードショーを片っ端から潰して、読みたかった本を読んで、それから…それから、、。


「…っ、」


視界が滲む。熱いものが頬を伝う。悔しい、悔しい、悔しい。あんなに頑張ってきたのに、こんなことで呆気なくなくなってしまった。

やりがいのある仕事も、尊敬する上司も。こんなことならもっと上手くやれたのに。

それかもっと頑張ってたら、実力でだまらせることだってできたかもしれない。後悔が怨嗟のように押し寄せて、涙は止まらない。

握りしめた拍子に何本目かのチューハイの缶がべキッと音を立てた。普段そんなに飲まないくせに、やけくそで買ったのだ。ワインにビールにカップの日本酒、もろもろの缶チューハイ。駅から家までの道のりをふらふらしながら飲み続けて、途中の公園で一人酒して、また歩いて。部屋にたどり着いた時には酩酊状態だった。

なかなか見つからない家の鍵を探してやっとの事で部屋に入る。
内鍵をかけたところで力尽き、玄関に倒れ込んだ。


我ながら最低。


冷たい床の感触と猛烈な眠気を感じながら、どうせどれだけ寝ようと、もう遅刻の心配もないしと開き直って目を閉じた。

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