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 雲一つない青空の下、蒸気機関車の煙が白く際立っている。機関車内は穏やかな空気が流れており、乗客も各々時間を有効に使い過ごしていた。
 連なる車両の中央車両に一際目立つ女性が本を片手に窓から外の風景を眺めていた。
 女性は若い見た目に合わず白髪であったが、人眼を引く理由はそれではなかった。彼女の顔には右目を覆い隠すように大きく包帯が巻かれており、痛々しく主張するそれを人々は何かと好奇心に煽られ目を奪われる。
 人にじろじろと見られているが、女性自身は何も気にしていないように窓の外を眺めつづけていた。
 平穏な雰囲気が漂う中、場違いな銃弾の音と怒鳴り声が聞こえて乗客が悲鳴を上げる。そして一間も置かないまま銃を持った男が前方車両から1人、後方車両から1人と大きな足音を立てながら入ってくる。


「お前ら動くな、この列車は俺らが乗っ取った!大人しくしていれば危害は与えない。わかったな!」


 大声で言い放ち、銃口を乗客に向ける男達。乗客は小さく悲鳴をあげるものの、自分の身を案じて大人しく従っている。また、白髪の女性も同様に本をしまいこみ、男達を見て小さく溜息を吐いた。


「おい!そこのお前、妙なナリしてんな・・・立て」


 男の1人は女性を見ると、彼女の腕をつかみ無理矢理立たせた。そして、通路の中央に連れて行き足元から舐めるように女性を見る。


「若い顔してんのに白髪(しらが)かよ。かわいそーにな。その傷もなかったらいい顔してるのになあ!」


 男達はニヤニヤと女性を見ながら乾いた声で笑った。
 女性は小さく舌打ちをすると、周りを確認してから勢いよく男の足を踏みつけた。
 男は痛みに声を上げ、女性に銃を向けるが、彼女は男の隙を狙い背後に回り込むと、背中に蹴りを入れた。その衝撃で男の手から離れた銃を奪い、もう1人の男に銃口を向ける。その後、倒れこんだ男の背に足を乗せ、抑え込んだ。


「動かないでください、撃ちますよ・・・そっちの奴は銃捨てて」


 女性は無表情で冷たく言う。
 立っている男は女性から視線を外さずに銃を床に置こうとかがみこんだ。ゆっくりと銃を手放すと思いきや、銃を構え直し女性に銃口を向ける。男は今だと言わんばかりに引き金を引いた。
 車内に2度発砲音が響く。そして、間をおいて倒れこむ音が聞こえた。
 乗客は悲鳴を上げて目を瞑り、女性から顔をそむけた。
 誰もが女性が撃たれたと錯覚した。だが、血の匂いも何もしない。恐る恐る目を開く乗客は驚きの光景を目にする。


「はやく銃おいてください。次は当てますよ」


 脅すような低い女性の声が車内に響いた。
 彼女の視線の先には腰を抜かして座り込む男が居た。よく見ると、男の足元と頭のあった位置の後ろの壁に銃痕が残っている。


「こっちは二日酔いなんだ。煩いんだよ」


 女性は吐き捨てるように男たちを見下ろす。その視線は生ゴミの掃き溜めを見ているような瞳であった。



 
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