その愛に触れたなら06
煉獄は、ゆき乃の両親に破談にすることの謝罪と、結婚の了承を得る為に何度も頭を下げた。
戸惑っていた両親も、最終的には認めてくれた。
娘がいつ命を落とすか分からない男の元へ嫁ぐだなんて認めたくなかっただろうが、煉獄の人なりを知っていた事と、娘がこの上なく幸せそうにしていて認めざるを得なかったのだ。
鬼がいなくなれば煉獄も長い世を生きられるのだから、と。
「お館様が新居になる家を用意してくださった!ご好意をお受けしようと思う。勝手に決めてしまったがよかっただろうか」
「はい。私は煉獄様……杏寿郎様と一緒であるのならどこでも嬉しいです」
ゆき乃の家の一室。
これから任務に向かう煉獄との束の間の逢瀬だった。
まだ杏寿郎と呼ぶ事に照れるゆき乃と、呼ばれることに嬉しくある煉獄とが見つめ合っている。
肌白のゆき乃の手を握りると、顔を寄せる煉獄に静かに目を伏せたゆき乃。
触れては離れ、触れては離れ。
それを繰り返した後に、堪らなくなった煉獄がゆき乃の唇を割って舌を侵入させた。
こんなにも抑えの利かない事があるのだと煉獄は思っていたが、それはゆき乃も同じだった。
愛おしい人の前では、溢れるものを止められないのだと。
任務がなければ、いや任務がなくてもこの場で致す訳にもいかないと煉獄は心で思いながらも、甘く痺れるゆき乃の唇を離せないでいた。
「ゆき乃の事になると抑えが効かない!」
「杏寿郎様っ、声を…恥ずかしいです」
「事実なのだから仕方ない!早く任務を終えて、一緒に住むぞ!帰ったら、さつまいもの味噌汁が食べたい!」
ゆき乃を片腕で抱き寄せたまま喋る煉獄に、ゆき乃は小さく頷くと、「どうか、どうかご無事でお帰りください」と今まで以上に強く願った。
もう一度、ゆき乃に触れるだけの口付けをした煉獄は「ゆき乃を遺して死なぬ!安心しろ」と任務へと向かっていった。
二人の新婚生活が始まるのは、そう遠くない。
煉獄が戻るまで、荷造りをし、身綺麗にしておこうと決めたゆき乃なのだった。
甘い生活の出来事は、また後日――――。
〜完〜