禁断の色香 06


目が覚めると、下半身に鈍い痛みを感じ、ゆっくりと身体を起こした。

普段から鍛えてるので、一般の人よりは痛みに強い。

とはいえ、この痛みはまた別物。

それに痛みが愛おしく感じるなんて初めてだった。

起こした身体から、スルリと着物が素肌を滑り落ちた。この濃紺の着物は、恐らく風柱が普段着ているものだろう。



「実弥さん……っ、」



幸せだった。

思いを汲んでもらって、大事に抱いてもらえて。

本当ならば手に届くはずのない人なのに。

未練など、残してはいけない。

だから涙なんて流しちゃいけない。



「起きたか……オイ、何泣いてんだァ?痛むのか?」

「さね……風柱様っ、あのこれは別に…」

「無理すんじゃねェぞ」

「ごめんなさいっ…ごめんなさっ……」

「オイ、どうした……ゆき乃」



側に寄り、着物を抱き締めたまま涙を流すゆき乃の背中を大きくて優しい手が温もりを与える。

震える肩を抱く腕から戸惑いを感じた。

これ以上、困らせてはいけない。

これ以上、欲張ってはいけない。



「ありがとうございましたっ…幸せです、私。この幸せな気持ち、一生忘れません」

「……」

「服着てすぐにお暇しますね。長居してすみませんでした」

「……オイ」

「あ、大丈夫です!誰かに言うつもりなんてありませんし、そもそも私が、」

「オイ、ちょっと待て!何言ってんだァ?お前は」

「え……?何って」

「何でもう金輪際会わねェような言い方してんだァ?勝手に話を進めていくんじゃねェ!人の話を聞かねぇのは普段からなのかァ?!」

「え、だって……」



風柱は着ていたいつもの羽織を脱ぎ、素肌が見えているゆき乃の背中にそっと掛けた。

それから、少し顔を赤らめながらも、真っ直ぐその瞳向けて言葉を紡いだ。



「ただ欲を吐き出すだけなら、お前を呼ばねェだろ。それくらいは分かってると思ってたが……あっちの知識はあっても、そういうのは分かってねェんだな」

「風柱様…?」

「お前が愛おしい。もっと知りてェ…」

「それって、つまり……いいんですか、私でも。だって風柱様に釣り合うような、」

「うるせェ…黙って俺の隣にいればいいんだよォ!つべこべ言うんじゃねェ!」

「か、か、風柱さまぁぁ」



うお、と言いながらも勢いよく抱きついた身体を逞しい腕と胸板で抱き止めてくれた。

火のついた心は、閉ざすべきだと思った。

また会いたいという想いは願ってはいけないと。

でも、風柱はその願いさえもかなえてくれようとしている。溢れた想いを受け止めてくれる。



「好きです、風柱様!」

「…とりあえず服着ろォ!また抱かれてぇのかァ」

「……」

「否定しろォ!ったく、」

「好きです、実弥さん…」



名前を呼ぶとピクリと眉が上がった。

澄ました顔をしてはいるけど顔は赤い。本当は分かりやすい人なのだろうと思うと、愛おしくなる。

だから、ゆっくりと顔を近づけると、「とんでもねぇ奴に捕まっちまったなァ」と口許を緩めながらも、拙い口付けを受け止めてくれた。



これから先のことは分からない。

だけどきっとこの先、幸せだと感じる瞬間には、隣には彼がいるだろう。

きっとその命が尽きるまで。



〜完〜

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