運命のひと 03


「炭治郎、今日さぁ」

「ごめん善逸!」

「いやまだ何も言ってねぇわ!炭治郎ぉぉ、せめて最後まで言わせてくれよぉぉ!付き合い悪いよぉぉぉ!」



鼻水を垂らしながら抱き着いてくる善逸の頭を撫でて、「明日ならいいか?予定空けておくよ」と言うと渋々離してくれた。

そうしている間に、視界の隅にゆき乃が見えて、自然と顔が綻んだ。

善逸がギロリと睨んで「約束破るなよっ!」と言い残し、廊下を走って煩くしている伊之助の所へと行ってしまった。

教室に残っている他の生徒も、炭治郎とゆき乃が隣に並ぶ事も、向かい合って笑い合う事も、もう見慣れているであろう。

二人が付き合いだした後、その噂は一気に広まったが、隠すことなく炭治郎自ら周りに伝えていくことで、好奇の目は少しずつ消えていったのだ。



「さ、行こうか!ゆき乃」

「うん」



ゆき乃の手を握ると、顔が赤くなっていく。

温かくて幸せな匂いを感じて、炭治郎の胸は熱くなった。







ゆき乃の部屋は、女の子らしい部屋だった。

シンプルなのかと思ったが、ファッション雑誌も置いてあり、聞いてみたら「最近ね、勉強してるの」と恥じらいながらも答えてくれて、それが自分の為なのかと思ったら余計に愛おしく感じた。



「かま……た、炭治郎!」

「ハハ、まだ緊張してるのか」

「うん、緊張する……でもね、なんか…名前で前にも呼んだことあるような気がして、しっくりくるの。何でだろうね」



その言葉に、胸が熱くなる。

ゆき乃には前世の記憶はないはずなのに、細胞の記憶なのだろうか。恐らく前世の記憶が微かに残っているのだ。

別に前世ことは知らなくていい。

こうして、今世でゆき乃と出逢えたのだから。



「ゆき乃」



隣に座る彼女の手の上に、そっと自分のを重ねた。

名ばかりになりそうなテスト勉強だったけど、せっかく二人きりになれたのだからと、抑えていた欲を少しだけ解放した。



「好きだよ、ゆき乃」

「私も……炭治郎が好き」



どちらともなく近づいた唇が重なり合う。

長男だし、色んな事に我慢することには慣れているし苦ではないのに、ゆき乃のことになると無理なんだと知った。

この甘い味を知ってしまったら、もう戻れない。



「もう、離さないから」



恐る恐るベッドに押し倒すと、ゆき乃が微かに笑った。

ゆき乃から聞こえる緊張と期待の匂いに、甘さが加わって炭治郎の脳を刺激する。

二人の重みでベッドが沈み、初々しくも甘い吐息が部屋いっぱいに広がっていった。



〜完〜

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