柱合会議 弐



「こんにちは、ゆき乃さん」
「あ!しのぶさん!」


 二人を見ていた面々の中にしのぶを見つけると、ゆき乃は駆け寄り言葉を交わした。
 耀哉としのぶが先に伝えてあったので、彼女が誰なのかはその場にいたメンバーは知っており、皆興味津々でゆき乃を見ていたのだ。


「皆さーん、彼女がゆき乃さんですよ。不死川さんの奥さまです」
「へぇ…派手ではねぇが地味でもねぇな。普通だな、普通!けどよくもまぁ不死川と一緒になろうなんて思ったなぁ!」
「君はこの時代の人間ではないのだろう! どれくらい先から来たのだ?」
「不死川にそのような相手ができたのは嬉しきこと……南無阿弥陀仏…」
「まぁかわいい! ねぇゆき乃ちゃん、今度うちにご飯食べに来ない? 未来の食べ物、教えてほしいわ!」
「おいお前、甘露寺にそれ以上近づくな。仲良くなろうなどという考えは今すぐ捨てろ」


 囲うように覗かれ、最後はほぼ同時に話しかけられ、困惑するゆき乃の前に立った実弥が「ビビらすんじゃァねェ」と一瞥した。
 そんな実弥に「お、やけに優しいじゃねぇか」と茶々が入る。
 それを鬱陶しそうに無視した実弥は、ゆき乃に全員の名前を面倒くさそうに紹介した。
 ゆき乃は全員に挨拶をし、蝶屋敷で働いていることも伝えた。
 この状況に興味を示さずに、少し離れた所で空を見上げている髪の長い小柄な男の子も柱なのかと聞けば、そうだとしのぶが教えてくれた。
 視線を動かした先、ゆき乃の目に映ったのは遠くからこちらを見ている義勇だった。
 ゆき乃が駆け寄ると、少し顔を緩めて義勇が微笑む。


「義勇さん! お久しぶり」
「あぁ、変わりはないか?」
「うん!」


 懐かしむように義勇がゆき乃の頭に手を置くと、ゆき乃の背後からいつの間にか実弥がやってきて義勇を睨みつけた。
 義勇がいたからゆき乃との関係が進んだという思いがあったので、多少目を瞑っている部分があったが、実弥にとって義勇が簡単にゆき乃に触れることは許容できなかったのだ。
 実弥の怒りの理由など義勇は分かっておらず、「元気そうだな不死川」とゆき乃の頭を撫でながら普通に挨拶してきたことで、実弥は青筋を立てながらゆき乃の手を引き自分の背中へと隠すように立った。


「ゆき乃に気安く触んじゃァねェぞ」
「妹の頭に触れて何が悪いのだ」
「テメェ…喧嘩売ってんのかァ!?」
「ほらほら、やめてよ二人とも! 実弥も怒らないで、ね?」
「…チッ」


 今にも始まりそうだった喧嘩は、ゆき乃のひと声で収まった。
 その光景を見ていた柱達は、それぞれに心の中で驚嘆の声を上げていた。
 中には弱味を握ったとほくそ笑んでいる者もいる。
 そうとは知らない実弥は、ゆき乃の手を引いて義勇から離すと「俺から離れんじゃねェ」と静かな声色でゆき乃に伝えた。
 さっきは離れてしまった手だったが、後ろ手ではあるが今度はしっかりと掴んでくれている実弥の手を見て、ゆき乃の心は温かくなった。


 ここにいる柱達が、今後のゆき乃の人生に大きく関わってくることになるなど、まだ誰も知らない。
 柔らかな日差しが降り注ぐ庭は、これから起こる争いを感じさない程に、とても穏やかだった。

ALICE+