草食バレンタイン


「俺、ゆき乃さんからのチョコ欲しいっす!」




応援団長かっていうくらい、大声でそんな事を言われた。

いや、ここ何処だか分ってる?

会社の廊下ですけど。

それより――――


「会社の女の子全員で買うから安心して?」

「いや!そうじゃなくて!え、伝わってない…」

「え?何が?」

「だからその……俺はゆき乃さんから、欲しいんです!」


顔を赤らめてそんな事を言われて、少しだけ気分が落ちるのは私だけだろうか。

そんな遠回しな言葉はいらない。

そんなんじゃ伝わらない。


「……あげない」


だから、なかなか素直になれない私。

年上のプライドが邪魔をする。

でもね…いくつになっても、想いを伝えてほしいという気持ちは、女なら誰しも持ってるんだよ。

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