「黎弥くん!お帰り!」
「おう、ただいま〜!」
玄関先で出迎えて目を閉じると、笑いながらチュッとお帰りのチューをしてくれる優しい黎弥くん。
バイト帰りの黎弥くんが帰るのは日付が変わる少し前。
事務員の私とは生活スタイルが違っていて、稼ぎ時の土日は当然黎弥くんはバイトを休めないから、平日の夜にこうして、私が黎弥くんの家に来るのが日課になった。
短い時間でも、こうして黎弥くんと逢える時間は凄く幸せで。
毎日の疲れがあっても、黎弥くんに会えばスコンとどこかへ飛んでいく。
「バリええ匂い〜」
「カレー作ったよ!食べる?」
「食べる食べる!その前に…」
ギュッと後ろから抱きしめられて、ラフにアップにしていた首筋に黎弥くんの唇が触れる。
それだけで体温上昇。
私も甘えん坊だけど、黎弥くんもたまに入る甘えスイッチ。
それが凄く好きで、今まで同じバイト仲間で友達で、その時には見えなかった黎弥くんの私だけに見せる一面を知れて、胸がキュンとする。
「疲れてないの?」
「全然!俺がタフなの知ってるっしょ?」
「でも最近ずっとシフト入れてるから」
そこまで言うと、黎弥くんが後ろから顔を前に出して私の唇を塞いだ。
パクリと食べるようなキスから、黎弥くんの舌がチロッと私の唇の輪郭を舐めて、そのまま口の中に入ってくる。
舌先で突かれて私もそれに応えると、身体を真正面に向けられて、更に深く、角度を変えて舌を絡ませる。
黎弥くんにキスをされるとすぐに熱くなってボーっとする。
意識が唇に集中して、徐々に気持ちよくなって…黎弥くんの手が私の腰を掴んで身体をピタッと密着させてるから、子宮がキュッと疼く。
「ンッ、黎弥くん…ダメ」
「ダメなの〜?」
「そうじゃなくって、火…火事になっちゃう」
クツクツと煮えていたカレー。
私もお腹空いたけど、今はそれどころじゃない。
黎弥くんがガスを切ると、また私にキスをして…――――そのまま移動してシングルベッドに雪崩れ込んだ。
私の上に乗った黎弥くんに真っ直ぐ見下ろされるとそれだけで身体が敏感に反応する。
普段は可愛いって思う事の多い黎弥くんだけど、こうして私にキスをして、身体に触れて、愛撫する黎弥くんは至極男前。
ジッと見つめられると、すぐに昇天してしまう。
「黎弥くんッ…」
「ゆき乃ちゃん、可愛い」
黎弥くんが私に覆いかぶさって、また唇を塞ぐ。
絡まる舌と私の身体を這う黎弥くんの手に感じていたら…――――ギュルルル、と突然お腹が鳴って黎弥くんの動きがピタッと止まった。
今の、私だ!
恥ずかしい〜!
「アハハッ!ゆき乃ちゃん、お腹空いてんだ」
「だってぇ!ピーク過ぎたから大丈夫かなぁって思ってたのに…もぉ恥ずかしい」
「ずっげぇ可愛い!」
笑いながら私のシャツを捲ってお腹にチュッとキスをする健ちゃん。
それから私の手を引いて起こすと、「飯食おう」と笑った。
「でも、」
「今ので俺も腹減ったし、食べた後でもいいじゃん!お腹空いてたら集中できないし」
「集中って」
「俺だけに集中して欲しいもん」
また、そうやって可愛い事言うんだから。