私の作ったカレーを美味しそうに、おかわりまでしてくれた黎弥くん。
誰かのために作った事なんてなかったから、そんな黎弥くんを見てるだけでも幸せで…黎弥くんとこうして過ごしてる時間が、ずっと続けばいいのにって思う。
「ゆき乃ちゃん、料理上手だよなぁ」
「本当?カレーは初挑戦だったんだけど…」
「めっちゃ旨かった!いつでもお嫁さんになれるな」
「…誰の?」
「そりゃ勿論、俺のに決まってるっしょ」
自分で勢いで言ったから、私の質問に明らかに照れながら、私のオデコをツンとする。
結婚はまだまだ先なのは分かってる。
私も急いでるわけじゃないし、黎弥くんは学生だし…でも、好きな人とこうして恋人になるっていう事は、そういう未来も当然考えるわけで。
そんな気持ちを知ってか知らずか、黎弥くんは私に未来を想像させてくれた。
きっと黎弥くんとなら…そう思える未来を。
「ゆき乃ちゃん、先風呂入ってきたら〜?俺が片付けしとくから」
「一緒に入る〜?」
「え?え!いいの?…ってダメダメ!風呂は響くから」
「ちょ、黎弥くん!何ですぐエッチな想像するのよ」
「そんなの、俺がゆき乃ちゃんとお風呂入って、なにもしない自信なんて一切ないっ!」
何故か偉そうに、自信満々にそんな事をいう黎弥くんに思わず噴き出した。
なんでそんなに威張ってるのよ。
笑う私に、「だから入っといで」と運ぼうと思っていた食器を私の手から受け取ると、ポンと背中を押してくれる。
疲れてるから黎弥くん先に…って思ってたけど。
優しい黎弥くんは、こういう事も頑なに優しいから、甘えて先に入らせてもらう事にした。
私が上がって、黎弥くんがお風呂に入って。
もうすでに日付が変わっていて、深夜番組をパチパチ見ていたら…――――カクンと首が揺れた振動でハッと目が覚めた。
「ゆき乃ちゃん、寝てた?」
お風呂上りの黎弥くんが蒸気を漂わせて私が背もたれに使っていたベッドにドカッと座ると、ガシガシ頭を拭きながら笑う。
「上がったよ〜って喋りかけても無反応だったから、真剣にテレビ見てんだと思ってた」
完全に脳が眠っていたんだろう。
ボケっとしてる私に手を伸ばして、前髪を指先で掬う。
黎弥くんを見つめあげながら目を瞬かせて、「眠たい…」と呟くと、黎弥くんがクスッと笑った。
「じゃあ、一緒に寝るかぁ?」
「うん…寝るぅ」
「ほら、おいで」
ベッドに座ったまま私を引っ張り上げる黎弥くん。
そのまま私をベッドに横たわらせて、黎弥くんも横になって、肘を立てて私をジッと見てる。
「もう目開いてないし」
そんな声が聞こえてきて、その後すぐに…――――私の唇は、温かくて柔らかな感触に包まれた。