熱視線02


颯太の気配がゆっくりと近づくのが分かった。

もうすぐそこまで颯太の唇が迫ってる。

颯太の熱を肌で感じ、私はそれを受け入れようとしていた。

――――んだけど、


「ゆき乃さん?」


ガチャっと扉の開く音がしたのと同時、颯太じゃない声が私の名を呼んだ。

それが誰だか私も颯太も分かって。

パッと開いた目。

ド至近距離で颯太と見つめ合った私は、凄く心臓がバクバクしていた。


「ゆき乃さん、いる?」

「あ…うん!なっちゃん、いるよ!ここ」


颯太が慌てて私から離れた。

すぐになっちゃんの足音が聞こえてきて、私と颯太を交互に見つめる。

この場所で、二人で向き合ってたら…誰だって、何かあったと思うに違いない。


「帰り遅かったから…どこ行ったのかと思って」

「あ、うん。ちょっと資料探してて、颯太がいたから…立ち話しちゃってた!ごめんね、すぐ戻る」

「…ならいいんだ。何もないなら」


ジッと颯太を見て、それから私にニコリと笑顔を向けて部屋を出て行ったなっちゃん。

何だか…なっちゃんの様子も変だったような?

いや、私のが変かも知れない。

だって…――あと数センチで、颯太とキスする所だった。


「ゆき乃さん」


颯太に呼ばれて、ドキッと胸が鳴った。

横を向くだけなのに…妙に緊張してしまう。


「ん?」

「あの俺…」


なっちゃんの出現に、私なんかより完全に動揺してたらしい颯太は耳まで赤くしていて。

私を見て苦笑いをした。


「颯太、私に何しようとしたの?」

「えっ!?」

「ププッ…その緩んだ顔直してから戻りなさいよ」


颯太の胸元をポンっと叩いた。

その手を素早く掴んだ颯太はすぐにその瞳を熱くして、


「俺、本気やから。ゆき乃さん」


私の胸を熱くさせるような言葉をぶつけてきたんだ。


- 31 -
prev 
novel / top
ALICE+