颯太の気配がゆっくりと近づくのが分かった。
もうすぐそこまで颯太の唇が迫ってる。
颯太の熱を肌で感じ、私はそれを受け入れようとしていた。
――――んだけど、
「ゆき乃さん?」
ガチャっと扉の開く音がしたのと同時、颯太じゃない声が私の名を呼んだ。
それが誰だか私も颯太も分かって。
パッと開いた目。
ド至近距離で颯太と見つめ合った私は、凄く心臓がバクバクしていた。
「ゆき乃さん、いる?」
「あ…うん!なっちゃん、いるよ!ここ」
颯太が慌てて私から離れた。
すぐになっちゃんの足音が聞こえてきて、私と颯太を交互に見つめる。
この場所で、二人で向き合ってたら…誰だって、何かあったと思うに違いない。
「帰り遅かったから…どこ行ったのかと思って」
「あ、うん。ちょっと資料探してて、颯太がいたから…立ち話しちゃってた!ごめんね、すぐ戻る」
「…ならいいんだ。何もないなら」
ジッと颯太を見て、それから私にニコリと笑顔を向けて部屋を出て行ったなっちゃん。
何だか…なっちゃんの様子も変だったような?
いや、私のが変かも知れない。
だって…――あと数センチで、颯太とキスする所だった。
「ゆき乃さん」
颯太に呼ばれて、ドキッと胸が鳴った。
横を向くだけなのに…妙に緊張してしまう。
「ん?」
「あの俺…」
なっちゃんの出現に、私なんかより完全に動揺してたらしい颯太は耳まで赤くしていて。
私を見て苦笑いをした。
「颯太、私に何しようとしたの?」
「えっ!?」
「ププッ…その緩んだ顔直してから戻りなさいよ」
颯太の胸元をポンっと叩いた。
その手を素早く掴んだ颯太はすぐにその瞳を熱くして、
「俺、本気やから。ゆき乃さん」
私の胸を熱くさせるような言葉をぶつけてきたんだ。