「だからね、颯太…」
「やめてよゆき乃さん」
「…え?」
私の言葉を予想したのか、颯太が私の言葉を遮った。
心なしか、私の肩を掴む颯太の手が肌に食い込む。
颯太の声に、言おうとしていた言葉が喉の奥へと飲み込まれていく。
「そんな奴らと一緒にせんといてくださいよ」
「……」
「そんな口だけの男と、俺の想いが一緒にされるなんて心外や。俺、ゆき乃さんの笑顔に惚れたんです…こっちまで嬉しくなるような笑顔に。俺はその笑顔を守りたいって思ってるし、俺が幸せにしてやるって…そう思ってます」
「颯太…」
「笑ってて欲しいんですよ、ゆき乃さんに」
「……」
「その笑顔を俺自身が崩すような事なんてしない。俺がゆき乃さんを幸せにするって、決めたんです」
「……」
「俺を選んでくれたら…――その選択を後悔させる事は絶対にしない!」
強く強く、颯太の想いが胸に響いた。
真っ直ぐ見つめられて、穴が開くんじゃないかってくらいそこが熱くて。
どこからか、ドクンドクンと…心音が聞こえてきた。
颯太の心臓?
そう思ったけど、私の手は今、自分の身体の隣にぶら下がっていて…触れてないのに感じるこの音は、もしかしたら私のものかもしれない。
自分の気持ちなんて考えられない。
それ程、颯太に見つめられてその熱さに吸い込まれそうになる。
「ゆき乃さん…」
スッと颯太の手が肩から頬へ動いた。
丁寧に撫でるように触れてから、掌全体で私の頬を包み込む。
途端に、身体の奥が疼いて…。
このまま、思うままに行動したらどうなるかなんて、分かってる。
颯太がどうするかなんて…その瞳から伝わってきた。
だけど私はそれを避けるどころか、それでもいいって思った。
考えなしにって訳じゃないけど。
この瞳を拒否できなくて――――近づく颯太の顔に、私はそっと目を閉じた。