慣れないお酒のアルコールが回るのは早い。
あっという間にフワフワしてきて、何となく世界が揺れてる感じがする。
クリアに見えていた視界も少しぼやけて見える。
なっちゃんと澤くんが何やら熱く語ってる。
なんて言ってるかは耳に入ってこないけど、きっとダンスの事だろうってのは分かる。
勇征もそうだけど、男三人ともに共通する趣味はダンスだから。
熱くなりすぎて身を乗り出した澤くんが倒したグラスを、さきイカをくわえたままのハルがせっせと拭いていた。
何か特別なことをするわけじゃないけど、みんなで集まって過ごす時間は大好きで、就活とか始まったらこれも出来なくなるって先輩達から聞いたりしてると、すごく貴重な時間に思えてくる。
だからこそ、できるだけ沢山の思い出を作りたい。
みんなとも、勇征とも――――。
「ゆき乃」
「ん〜?」
「酔っ払ってる?」
顔を上げると勇征が凄く近くにいて、ドキンとした。
いや…近づいてるのは私。
フワフワしてる身体を、いつの間にか勇征に預けていたらしい。
勇征の身体にもたれて勇征の首筋あたりに頭を置いて座っていて、こんなにフワフワと気持ちいい感じになってるのはアルコールのせいと、勇征がずっと頭を撫でてくれていたからだって気づいた。
この心地いい温もりは、勇征だからだって。
「ぜんぜん酔ってない!もっと飲む」
勇征の手にあったグラスを取ろうとしたら、「ダーメ!」とヒョイっと上に持ち上げて離された。
追いかけた手を、もう片方の勇征の手が掴む。
「なんでぇ?酔っても介抱してくれるんでしょ?」
「え?なに、ゆき乃ってば俺に介抱されたいの?しちゃう?」
「あはは、してしてぇ!」
アルコールの力って凄い。
吃驚するくらい甘えられる。
こんなに勇征に引っ付いていても、許される気がする。
「ゆ〜せ」
少し身体を回転させて勇征のお腹あたりに手を回した。
ピクンと勇征のお腹が動く。
そのまま顔を上げると、勇征が表情固まらせてジッと私を見ていた。
「あ、ちょ…ゆき乃?」
「ゆせ、あったかい」
「えっ?」
「ん〜気持ちいい」
胸元で顔をスリスリしていたら、暫くして勇征の手が背中に回った。
ポンポンと何故か遠慮がちに背中を叩いてる。
温かい…っていうより、ちょっと熱い勇征の身体。
「あれ?ゆき乃さん寝てるの?」
遠くでハルの声がしたけど、フワフワした意識を戻すことはできなかった。
ただ、ドキドキと早くて力強い音がすぐ傍で耳に届いていた。