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そうして話しているうちに、真琴の家に着いていた。

この風景も自分の気持ちも昔と何も変わらないのに、真琴だけが大人に近づいているように感じられた。

「真琴。」

幸村が立ち止まり向き直ると、真琴は不思議そうにこちらを見た。

その瞳を見てほっとする。

ああ、なんだ。

あの吸い込まれそうな瞳は、昔と何も変わっていなかった。

真琴の笑顔や、共有した時間が幸村の中を瞬時に巡る。

何度でも彼を魅了するその瞳の奥に、昔と同じ胸の高鳴りを感じた。

漸く決心した幸村は、ずっと言おうとしていたことを声に出すために、ゆっくりと口を開いた。

「君が好きだ。

ここで初めて出会った日から、ずっと君を想っていた。」

真琴は目を見開いて固まっている。

少しの沈黙が流れる間に、真琴の顔がみるみる赤くなった。

「……ほ、本当?」

「本当だよ。」

「嬉しい…。」

真琴は幸せそうに笑った。

彼女の目に浮かぶ涙が、夕日に照らされて光る。

「…おいで。」

幸村が両手を広げてそう言うと、真琴は言われるままに傍へ来た。

幸村は真琴を優しく抱きしめた。

自分の鼓動の音と彼女の匂いが混ざって、この状況に何だか目眩がするようだった。

真琴が幸村に身体預ける感覚、その重みさえも愛おしい。

彼女の手が背中に回る。

触れている所全てから、彼女の体温が流れ込んでくるようだった。

幸村は自分の気持ちを落ち着けるように、無意識に真琴の頭を撫でていた。

「そうでなくても、君の虜だったのにな…。

今の君は可愛い上に強いんだから、ずるいよね。

もう放さないから、覚悟しておいて。」

真琴は幸村の胸に顔を埋めた。

「うん。

精市くん、大好き。」

真琴の「好き」に心臓が跳ねる。

たった2文字がどんなに強力だと思っているんだ。

耳まで赤くなった幸村が真琴を見ると、彼女は本当に嬉しそうで、何も言えなくなってしまった。

きっと自覚がないから、そうやって嬉しそうに笑うんだろう。

これまで真琴を追いかけてきて、何度この瞬間を夢見たことか。

もう放さない。

さっき自分で言った言葉を反芻し、幸村はもう一度真琴を強く抱きしめた。

fin.

※次のページはあとがきです。