丸井はたった今、付き合っていた彼女との関係を終わりにしてきたところだ。
一人分スペースの空いたベンチに座ったまま、「ふう」と息をついて空を見上げる。
青と紫の間みたいな不思議なピンク色が、心にかかる靄と重なった。
いつからだったか。
心にぽっかりと穴が空いたような、何かが足りないような感覚に、常に付き纏われるようになったのは。
気のせいかもしれないし、実は俺が知らないだけで、みんなそんなふうに感じながら生きてるのかもしれないとも思う。
そんな何かを埋めるために彼女を連れてみても、どうもその空白にぴったりはまらない。
そして付き合ってくれる女の子に申し訳なくなって、そんな自分にも嫌気が差したら別れを切り出した。
そんなことを何度か繰り返していたら、周囲から軽い人認定されてしまった今日この頃だ。
そう見えるのは仕方ないと思うけど、俺としちゃあ別に遊んでるわけじゃない。
「お、丸井か。どうしたんじゃ、こんなところで。」
通りかかった仁王が声をかけてくる。
丸井は軽く片手をあげて見せた。
「別れてきたとこ。
たった今からフリーなんで、シクヨロ。」
仁王は「ほぉ」なんて言いながら、丸井が座っているのとは反対側の肘掛けに軽く寄りかかった。
「そうか。お前さんはわからんのう。
結構可愛い子じゃったのに。」
まあそうかもしれない。
別に嫌いで別れたわけじゃないから、彼女のことを否定する気は微塵もない。
むしろ付き合わせて悪かったと思ってる。
割とあっさりと別れてくれたのがせめてもの救いだ。
「んーまあ、なんか違ったっていうか。」
「いつもそう言っとるのう。
お前さんは女に何を求めとるんじゃ。」
「理想ってこと?そうだな〜…。」
「違う。」
仁王は丸井と目を合わせず、髪の先を弄りながら言った。