…ああ、またあの夢だ。
丸井は走って何かを追いかける。
多分、人だ。息を切らして誰かを追いかけているらしい。
ようやくその手を掴んだ時、額に誰かの温かい手が触れた。
すると周りの景色は歪んで、気づけば公園の中に一人取り残されていた。
カーテンの隙間から差し込む朝日に、丸井は目を開けた。
「…また同じ夢だった気がする。」
内容は思い出せなかったがすぐにそうとわかった。
その夢を見た朝は決まって、目が覚めると泣いているからだ。
前に彼女と会ってから1週間が経ち、丸井はまた例のカフェに来ていた。
今週は彼女の方が先に着いていて、丸井が店のドアを開けるとひらひらとこちらに手を振った。
「丸井くん。」
「よ。」
丸井は目の横でピースを作って見せた。
向かいに座ると、彼女がすでに注文していたワッフルの甘い香りが鼻を擽る。
「美味そうなもん食ってんじゃん。
今日は腹減ってんだよなー。何頼もっかな。」
「丸井くん、いつもお腹空いてるじゃない。」
彼女は楽しそうに微笑んだ。
丸井はメニューの中からドーナツとドリアを注文して彼女に向かい合った。
今日は勉強する気になれないから、雑談して過ごすつもりだ。
彼女も今日は勉強道具をあまり持っていないようだしちょうどいい。
丸井はずっと気になっていたことを聞くことにした。
「なあ、お前付き合ってるやついんの。」
彼女は一瞬目を見開き固まって、複雑な表情で答えた。
「今は…いないかな。」
あ、最近振られたとかかな…。
あんま聞かない方が良かったやつか。
丸井が話題を切り替えようと口を開きかけたのを、彼女が遮った。
「じ、実はね…。私、この前まで結婚相手が決まってたの。
その、所謂…許婚?で。」
持っていたスマホが滑り落ちた。
「えっ…?は…?!」