「あの人、誰かの知り合いッスか?」
練習後、切原がそう言って指さした人物を見て柳は首を傾げた。
「さあ。制服を見るに、高校生らしいな。」
彼女はきょろきょろとコートを見回し、目当ての人物を見つけるとぱっと笑顔になった。
「ブン太くん!」
聖良の声に、丸井はすぐさま彼女のそばへ駆け寄った。
「聖良、もう来てたのか。」
「うん。今日やるつもりだった勉強、全部終わったから。
一緒に帰ろ。」
「おう!すぐ着替えて来るから、待ってろよ!」
そう言って嬉しそうに笑う彼の笑顔に、もう以前のような曇りはなかった。
幸村がその様子を見てくすりと笑う。
「もういつもの丸井に戻ったみたいだね。」
真田も満足そうにそれを見ていた。
柳生はほっとしたように仁王に言った。
「仁王くん、良かったですね。
丸井くんが元気になったようで。」
「プリ。」
仁王は答えるでもなく、そっぽを向いた。
(…どうやら、見つけられたようじゃな。)
「おい、忘れてんぞ。」
高速で着替え終わって部室を出た丸井に、ジャッカルがタオルを投げて寄越す。
「サンキュー。んじゃ、お先ぃ!」
丸井はタオルを受け取ると、聖良と共にコートを後にした。
丸井がするりと彼女の手を取ると、一回り小さな手がきゅっと握り返してきた。
えへへ、と嬉しそうに笑う彼女に思わず顔がにやける。
「ブン太くん、今度またあのカフェに行こうよ。」
「いいねえ。あそこのドーナツ最高だからな。」
笑い合いながら並んで歩く帰り道、もう丸井の中に空白はない。
聖良の形の温もりが、彼の心を幸せで満たしていた。
fin.
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