「お前の方が先に全部思い出したんだな。
だから血相変えて出てった訳だ。」
彼女はこくりと頷いた。
丸井は大きなため息をつく。
「確かに、あの時俺本気で出て行こうとしてたし、そのまま実行してたら大変なことになってたかもな。
我ながら無鉄砲だったと思うぜ。」
中一と高一の子供がいきなり駆け落ちなんてしたら、それこそ引き離される理由を与えるだけだっただろう。
最悪、事故や怪我に遭っていたかもしれない。
「実はさ、お前にもう一回会うまで、どうにも埋まらねえ寂しさみたいなのが俺の中にずっとあったんだ。
何回も夢にも見たりして。
…お前だったんだな、聖良。」
初めて見かけた時から、妙に彼女のことが気になっていた理由がやっと分かった。
心に空いていた空白は、聖良の居た場所だったんだ。
彼女と居るだけで、丸井の気持ちはこれまでにない程満たされていた。
「私も、ずっと不思議だったの。
許婚として紹介された人と相性が悪い訳じゃないのに、何故か"その人は違う"って自分の中から声が聞こえる気がして…。
お父さんやお母さんとも何度も喧嘩して、相手の人にもたくさん謝って、やっと解消させて貰ったの。
自分でも分からない何かに、動かされたような感覚だった。
忘れたことも、忘れていたから。」
丸井は2年前と同じように、聖良をまっすぐみつめる。
以前同じくらいだった身長は、もうとっくに丸井が追い越していた。
「聖良。俺、やっぱりお前が好きだ。
もう一度誓うぜ。
俺は必ず、お前の隣に相応しい男になってやる。
だから俺のそばにいてくれ。」
「私のこと、見つけ出してくれて…それだけでもう十分、かっこいいのに。」
真っ赤になって顔を背けた聖良がいじらしくて、胸の中がじんわりと熱くなるのを感じた。
「もう勝手にどっか行くんじゃねえぞ。」
「うん。…ブン太くん、大好き。」
幼い頃は見上げていた、聖良の優しい目。
いつも丸井を守ってくれていた彼女は、丸井が辛くないようにと記憶を消した。
強がっていたのに、結局俺は聖良に守られていた。
でも今度こそ、もう守られるだけにはなりたくない。
「これからは、俺がお前を守るから。」
それは自分自身へ言い聞かせる言葉でもあった。
聖良を抱く腕に力を込めると、それに応えるように彼女の腕が丸井の背中に回った。