一族の小話
悪魔だからといってなにか悪さをするかと言えばめちゃくちゃする訳でして。
詐欺師とか暗殺とかはもうめちゃくちゃにしておりまして。それが祖先な訳で、たくさんの恨みを買うのなんて火を見るより明らか。
森を見て木を見ないとはよく言うけど、悪魔だけど悪いことをしないできないもの達も少なからずいたり、夢魔の中でも人の夢や精気を吸い上げることに抵抗があったり、吸血鬼だけど血は吸わずにバラだけを食べ続けた貧弱な子もいたりした、らしい。
下手な悪魔より堕天使の方がタチが悪かったりするから結局どの種族かよりもどんな性格か、ってところによる。
でもそんなのこちら側じゃない人間や妖精たちには分からないから、どんどん迫害されて行った。あまりにも惨たらしい拷問をするからさすがに政府が介入をして保護区域を作る代わりにこれ以上の侵害はしない事を命じる法律が作られたのはつい500年ほど前だろうか。
一見政府が守ったかのように見えたはみ出しもの達。
政府の息がかかった人間や妖精以外誰も立入ることが出来ない区域。行われたのは保護という名の実験と観察。
この種族とこの種族のかけあわせを作ればどうなるのか?っていうのを多岐にわたって展開しており、それは魔法医療技術などの発展に大きく貢献したはしたのだけれど強制交配で作り出された子達の中には酷く欠損してる子、人の形を成してるけど獣の脳みそしか持たない子、膨大な魔力の代わりに正気を保ってられない子などたくさんの“失敗作”も出来てきた。
失敗作は運が良ければ実験のマウス代わりになって、運が悪ければリサイクル。
悪魔の一族には死んだら亡骸を残さない代わりに魔法石に変わるもの達がいて、意図的にそれを始祖として改良されてきた子達だから死ねば魔法石になる。
それはそれはもう大変に美しくて暴力的に魔力を含んでいる。半永久的に魔力を保ち続ける魔法石の中でもかなりグレードが高いから傲慢な金持ちたちによく売れる。それを闇ルートで販売しては実験の資金にして、実験を繰り返したのを彼らは平然とリサイクルと呼んでいた。
口止めのためなのか文化的生活の保証なのか、保護区域の失敗作から免れた人間には比較的裕福な生活があてがわれた。
識字率は100%、第2第3言語を話せる者も入れば、古代文字を読めるものもいた。読書や頭を使うボードゲーム以外の娯楽はほとんどなかったからみな当たり前かのように学べるものは全て学ぶ、という姿勢だったらしい。
それがいけなかった、とおばあさまは美しく頬笑みを浮かべる。
下手な研究者たちより知恵を着け、もとよりずる賢く頭を回転させられるもの達。手に入れたいと思えば容赦のないものたちも多くいる中で知恵を与えたのが行けなかった。
おおよそ50年前。従順に実験に参加をする振りをして研究結果と研究員全てを人質にとって実験からの解放を求めた。
国お抱えの精鋭たちと戦争を行うまでに発展したが400年間もの間、魔力を高めること、より優秀な種を残し育てることに注力して研究し続けた結果、ただの人間でしかない精鋭たちと強制交配の実験体とでの戦争は実験体の圧勝。
研究員を唆して寝返らせたのも大きな要因だった、と大おばあさまは嬉しそうに話す。唆したのは十中八九あなたでしょうね。
過去の実験体たちのおかげで賠償責任としての保護区域の人間たちの生活補償として生活の続行。娯楽の参入。より文化的な生活。強制交配は今後絶対にしないさせない。一般的な世界への参入を条件として飲ませ、条件付きの実験と観察の続行と魔法医療技術及び薬学の貢献につとめることを約束した。
今や私みたく外部の学校へ通うことができる子達も極わずかだけど増えて外へ働きに出る子たちも出てきた。
まだまだ制限付きの生活だけど、昔の閉鎖的な生活と尊厳を無視した強制交配がなくなっただけ幸せだとおばあさまは私の髪の毛を緩く撫でて微笑む。
しかし近頃、一族の一部で『反保護派』のものたちが出てきていると聞く。
国家の保護から抜けて実験の協力も破棄し、新たな種族として独立するべきだという一派。
そして国に協力しつつ過去の贖罪を忘れずに世界に馴染むのを待つべきだと保護派の一派。
若いものたちを中心に展開されている反保護派の動きが激しく、目に余る行動も増えてきたことに大おばあさまが目を伏せて悲しむ。
なるべく話し合いで穏便に詰めていきたいところだが、反対派の血の気がすさまじく度々戦争に発展し、誰かがオーバーブロッドして政府が強制介入をして終わるという、誰かがオーバーブロッドするまで終わらない喧嘩をしているだけの様な気がしている。
これが、たびたび彼女が学校を休んではボロボロになって帰ってくる理由なのだが今考えたらめっちゃアホだな。と自分でも思う。
大おばあさまの悲しむ顔は見たくないし、自分自身の血筋に懺悔の気持ちを持っている自分に対しては保護対象として贖罪を続けることが真っ当だと思っているのだけれど、みんながみんなそうでは無いのだなと心を痛める。
明日も半期ぶりに反対派と保護派の“話し合い”が行われる。
分かってていくなんて貴方もお人好しだ と呆れる友人の顔を何度見ただろうか。なんとも思ってないふうを装って今回は大丈夫だってー!と笑い いってきますと声をかければ お気をつけて、と背中を向ける。納得いかない顔をうかべてるだろう後ろ姿に手を振って鏡をくぐりぬける。
帰ってこれたら、次はなにを一緒に食べようかなと頬笑みを浮かべて。