01




宮侑、宮治、稲荷崎高校でこの名前を知らない人はいない程に有名な双子の兄弟。負けず嫌いで荒っぽい性格の侑、見た目は落ち着いて見えるがやはり負けず嫌いの治、のちに高校バレー最強ツインズと呼ばれるまでになるのだが、今はただただ外見で人気を誇っている。高校入学当初より女子からの人気は凄まじかった。入学からたった数ヶ月で、もう何度呼び出されたことか。呼び出される度に侑は「モテる男はつらいなぁ」とニヤリと笑い、逆に治は面倒くさいと言わんばかりに深くため息をついていた。男子の中でも話題の美人女子や可愛い女子も挙って告白するも双子に受け入れられた女子はまだいない。ちょっとした興味本位で同じバレー部の角名は彼女でもいるのかと聞けば、二人揃っていないと言う。高校は、バレー一筋でいくのかと聞けば、勿論バレーは一番だが、そう言うわけでもない。じゃあなぜかと聞けば、

「好きでもない女と付き合えんわ。」

健全な男子高校生であれば、彼女の一人や二人欲しいと思うのは自然ではあるが、バレーを超えるほどの女性が現れない限り、この双子には彼女なんて必要がないのかもしれない。でもそんな双子に好きな人が出来たなら、それは少し、いやかなり興味はあるな、双子だと女性の趣味も同じなのだろうか、と角名は思った。






◇◇◇





「あれ?侑は?」

今日は部活が休みなので、放課後にスポーツショップに行こうと話していたバレー部1年生の四人。授業も終わり、集合場所の治の教室まで来た銀島は、侑がいない事に気付いた。

「ツムは、用事。……おれが行きたかったんに。じゃんけんで負けた。はああ、食いたかった。」
「?…まぁよう分からんけど、行こか。シューズの紐、昨日やばなってきてん。」
「おん。ツムにも買うもん頼まれてん。角名、行こうや。」
「うん。」

リニューアルオープンしたスポーツショップの入ったモールへと三人は向かい、各々必要なものを揃えた。

「甘いもん食いたい。」

買い物が終わり、スポーツショップを出た瞬間に言った治に、銀島はそういえばと言った。

「期間限定クレープ屋ってさっきポスター見たで。」
「おっ。そこ行こ。」

1階に下り、フードコートをぐるりと見渡したがそれらしき店が見当たらず、インフォメーションで「クレープ屋はどこですか?」と大きい男三人で聞くという、それは角名も銀島も少し恥ずかしく思った。

「あったで。」
「あったね。……あれ、片割れじゃない?」

クレープ屋のすぐそばに置かれたベンチに座る侑に角名が気付いたが、その隣に座っているのが女の子だという事、さらにはその子が着ている制服がお嬢様学校として有名な女子校の制服であった事に、角名と銀島は「は?」と言った後の言葉が続かなかった。
侑は、隣に座る女の子になにか声をかけると、女の子は手に持っているジェラートだろうか、それと侑を交互に見て侑に何か言ってジェラートを差し出した。侑は、ジェラートを持つ手ごと両手で包み、ジェラートを口の中へと入れた。女の子は、侑の口から離れたジェラートを見て侑に文句でもいったのだろうか、侑は眉をハの字にしながら柔らかく笑った。

「え、なにあれ。侑って彼女いたの?」
「は、なんやあのふわふわって可愛いらしい子は。」

一連の行動に、角名と銀島がそう言うと、隣にいた治は「彼女やないで。」と言って、侑達の座るベンチへと歩いた。角名と銀島も治から少し遅れて歩いた。

「ツム、名前。」
「あ?サム何してん。」
「買いもんの帰りや。期間限定のクレープ屋ある聞いて来たわ。」
「クレープて、女子か!」
「喧しわ。ここ来とったんやな。名前、それ何味?」
「レモンチーズ。」
「美味そやな。」

治は、侑と同じように名前の手を包むように取ると、持ったジェラートを口へと入れた。

「お、美味いやん。」
「……。」

買ったばかりだったジェラートは、双子の一口の大きさのせいで、すでに半分以下となってしまった。

「アホか!」
「なんや、ツムやて食っとったやろが。」
「そこ見とったなら分かるやろ!俺が怒られたん!」
「それはお前の一口が大きいからやろ!」
「お前も同じや!いや、お前の方がでかいわ!」

悲しそうにジェラートを見つめる名前の横で、言い合う双子をまぁまぁと銀島が嗜めた。

「名前、ごめんなあ。クレープ食うか?」

治が名前にそう声を掛けると、少し考えてから首を横に振った。

「今日の夕飯、ビーフシチューって言ってた。」
「ほんまか!」
「うん。…でも、クレープ一口もらう。」
「おん、ええよ。甘いやつでもええ?」
「うん。治が食べたいやつでいい。」
「待っとってな。」

ビーフシチューと聞いて、喜ぶ治と侑になぜ人の家の夕飯に喜ぶのかと角名が聞いた。

「今日の夕飯は、おかん遅くて名前んちなんや。」
「え?どうゆーこと?」
「ああ、名前は、俺んちのお隣さんや。そや、これ名前や。名前、同じ学校の角名と銀や。」

どうも、と首だけ傾けた角名と銀島に、名前も顔を上げてニコリと、笑ったとは言えない表情に驚いた。確かに名前の口元は弧を描いているように思えるのだが、目が全く笑ってはいなかった。その不自然さに、角名の背中が少しだけヒヤリとした気がした。

「お待たせ。名前食う?」

左手にジェラートを持った名前に、買ったばかりのクレープを治が渡せば、名前はそれを右手で受け取った。

「なんや、食いしん坊な子になっとんな。」

治の柔らかい声色に侑もフッと笑う顔は、とても柔らかい。まだ知り合って数ヶ月しか経っていないが、いつも喧しく言い合いしている双子がこんなにも優しい顔が出来るのかと角名は驚いた。名前は、双子の言動にほんの少しだけ眉に皺を寄せ「侑がアイス持ってくれないから。」と口を尖らせた。その表情は固くもあるが、先程の笑顔に比べれば普通であろう。

「ビーフシチューが待ってんなら、そろそろ帰るか。」

侑がベンチから立ち上がると、それに続くように名前も立ち上がる。想像よりも小さく、双子の肩にやっと届くか程の身長に可愛らしいなと角名は思った。

「治は?遅くなるなら、おばあちゃんに言っておくけど。」
「いや、一緒に帰る。ほな明日な。」

侑と治は、角名と銀島に手を上げると名前を挟んで歩き始めた。その後ろ姿を見ていれば、真ん中に歩く名前は、すっと後ろに下がると左にいる侑の隣に並ぶが、すぐに侑は名前を真ん中へと戻すよう移動する。次に名前は、右に並ぶ治の隣に並ぶが、侑と同じよう治はすぐに名前を真ん中へと戻す。

「何してんやろな。」
「さあ。でも何かに似てる?」

角名と銀島は揃って首を傾げたがそれが何か分からず、双子達とは逆にの道を歩いて行った。

翌日、昨日の攻防はなんなのかと角名が治に聞けば、「捕らえられた宇宙人みたいで真ん中歩くの嫌なんやて。」と言われ、それだと思い出し角名は少しすっきりした。




2022.09.10




monoGatari