02
もう少しで梅雨に入るという頃、いつもの様にバス停に立つ友達名前は、朝から暑いと額に薄らと浮いた汗をハンカチで押さえながら名前を待っていた。
遠くからでも分かる、薄い水色のセーラー服が見えて来ると、友達名前は片手を上げようとし、その両隣にいる無駄に背が高いいとこを見つけ顔を顰めた。
「友達名前、おはよう。」
「名前、おはようさん。暑いね。もうわたし、汗かき始め…」
「おい、俺らもおるんやけど。」
「チッ、知っとるわ。」
「おまえ、名前と同じ制服着て舌打ちすんなや。」
わざと視界に入れない様にしていた友達名前は、思わずと言った感じで舌打ちが出てしまう。
稲荷崎高校と名前達が通う女子校は、バスの同じ沿線にあり、女子校の方が三つほど手前で降りる。駅とは逆方向となり、また各々の高校の最寄駅もまた別となるので、朝の通勤通学時間にも関わらず、比較的空いている。その代わりバスの本数が少ないのは残念だが仕方がない。
乗る予定のバスが2分程遅れて到着し、四人はバスに乗り込んだ。後方の二人掛けの座席がいくつか空いており、最初に乗り込んだ名前が座ると、次に乗った治は名前の隣に座った。
「なんで治がそこ座るん。」
「あ?たまにはええやろ。」
「そこは、わたしの席や。」
「あっちも空いてるやろが。」
いつまでも揉めていられる訳でもなく、友達名前は本日2回目の舌打ちをしてから、空いている席へと座った。そしてその隣には、侑が座った。
「……友達名前のその制服姿、見慣れんわ。」
侑は、名前と同じ制服を着る友達名前をチラリと見てからため息を付いた。そんなものは、自分でも分かっていると思うがその言葉を飲み込む。言い返したところで、いつもの様に言い合いになるだけであり、朝からそんな事で体力消耗は避けたい。
「なんや、なんか言い返さないんかい。」
「面倒くさいわ…。」
「ほおん。………で、名前はどうや。」
その声は、いつもより抑えられていて、通路挟んで斜め前に座る名前と治には聞こえない大きさだった。友達名前はチラリと二人に視線を向けてから侑を見た。
「大丈夫や、と思う。」
まだ高校に入ってから2ヶ月と少ししか経ってはいない。さらにこれから梅雨に入る為、雨の日も増える。だいぶ落ち着いたとはいえ、それは突然起きるので、これからも大丈夫だとは言い切れない。学校の先生には伝えてあるし、もし何かあればすぐに友達名前を呼んでもらえるようにはなっている。
「名前の事はまかしとき。」
「おん。なんかあったら、絶対連絡しろや。」
「分かっとるわ。」
「すぐ学校行ったる。」
「え、学校は来んでええよ。」
「は?なんでや。行くわ。」
「いや、マジで来んなや。」
「なんでや!」
「おい、お前ら喧しいねん。静かにせえ。」
案の定、言い合いとなった侑と友達名前に、治は振り返り二人に恥ずかしい奴らという目を向けながら言った。それに対し、本日3回目の友達名前の舌打ちが響き、名前は一瞬ふっと笑った。その一瞬の顔に、侑も友達名前もヘラっと笑うと、治は、キモッ、と言い放った。
2022.09.18