「何や…金貸しもおったんかい」
「久しぶりに会うのに、酷い言いぐさですね」
そう言った秋山は真島の後ろに立つ彩香に気付いて怪訝な顔をするが、その目は少し責めるような眼差しに変わる。
「珍しい…今日は女性連れですか?」
「せや、だから邪魔せんといてな」
皮肉っぽく言うと、秋山からひとつ分席を空けて真島はカウンターに座った。
彩香は秋山から隠れるように、その奥に座る。
「それが、そうも行かないんですよねぇ…」
「あぁん?」
「俺、ちゃんと忠告したよね。彩香さん」
秋山の口から、意外な彩香が出てきた事に真島は驚いて彩香を見た。
「何や、二人知り合いやったんか?」
「……すみません、秋山さん」
俯き、謝罪の言葉を口にする彩香を見て、何かを察したのか真島は秋山を鋭く睨んだ。
「何やお前。俺の連れに何か文句でもあるんかい」
低いドスの効いた声で凄む。
「大ありですよ」
フゥー。と溜め息をついて、吸っていた煙草を灰皿に押し付けた。
「真島さん。あんた一体どういうつもりですか?」
「あぁ?一体何の話しとんねん」
「彩香さんの事ですよ。あんたみたいな人間と一緒にいても、彼女にはデメリットしかない」
「そないな事、何で分かんねん?」
相変わらず、今にも噛みつきそうな真島との視線を逸らさず彼は続ける。
「…真島組の構成員は千単位だと聞いていますが」
「せや、それが何やねん」
真島は苛立たしげに煙草に火をつけ、白い煙を吐く。
「東城会でも、真島組は構成員の数も財力もトップの組織だ。そんな所の頭張ってるあんたの日常が平和なものとは到底思えない」
煙草を口に運ぶ手を止め、真島は秋山を睨んだ。
「……俺の存在がオーナーはんを危険に晒すぅ言いたいんかい?」
秋山はフッと皮肉っぽく片方の唇を上げて嘲笑う。
「さすが真島さん、察しが良くて助かりますよ」
一触即発の二人の会話を、彩香はハラハラしながら聞いていた。
セレナのママも、緊張した面持ちで二人の言動を見守っている。
「俺はね、出来ればあんたに仕事以外で彼女に関わって欲しくないんだ」
「お前に指図受けるいわれなんかないわ」
「………そんな怖い顔で凄んでも、俺は引きませんよ。真島さん」
かたくなな態度の秋山に、
「お前…まさかこの人に惚れとるんか?」
口元に薄く笑みを浮かべる真島だが、その目は笑ってはいない。
秋山は「そうじゃない」と首を振る。
「俺は、『ロンディネ』の前オーナーに頼まれたんですよ。彩香さんの事を宜しく頼む、助けてやってくれってね。俺は彼女の…言ってみれば後見人みたいなもんです」
「秋山さん…」
「彩香さん。君がどんな人間と付き合っても構わないんだ。ただ、君が少しでも危険な事に関わるのだけは見過ごせない」
秋山は彩香の目を見つめて寂しげに笑った。
「それだけは分かって欲しいんだよ…」
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