翌日、事務室に二人を呼んで話をしてみた

「でも、やっぱり好きなんです…」

彩香の言葉にも、レイナは耳を貸す事は無かった。

これは重症だ…。


どうしたものかと、思案を巡らせている時に、瑠伽が困った様子で事務室に現れた。


「あの、オーナーを指名のお客様が…」

「え、またなの?」

「…それが、初めて見るお客様でして…」

「?」



シートに座る客を見て、彩香は驚いた。

「咲弥さん!?」

「はは、来ちゃいました」

昨夜彩香の隣に座ったホストがそこに姿勢よく座っていた。

「どうしたんですか?」

「いやぁ、昨日彩香さんと話して凄く楽しかったので、また会いたくて」

「迷惑でしたか?」と、彩香の顔を窺う咲弥に

「いえ、そういう訳では…」

と曖昧に応えた。

「でも、咲弥さん、申し訳ないですけど、私はあのお店のお客にはなりませんよ?」

咲弥の隣に座り、自分の意思を伝えた。

キャバクラ嬢の客には、まず自分がその嬢の店に通って信用を得、徐々に取り込んでいく。
ホストがよく使う手段だと聞いている。

「いや、俺はそんなつもりは全然無いですよ、純粋に彩香さんに会いたかっただけなんです」

と少し傷ついた様子で笑顔をつくった。






彩香と咲弥の様子を、複雑な表情で見守る瑠伽の頭を、何者かが小突く。

「イタッッ!!あ、兄貴!!」

「瑠伽チャン、オーナーはん見かけんのやけど、外出中かいのぅ?」

「オーナーなら、あそこですよ」

「また客についとんのかいっ……って、誰や、あの男」

目を細めて、二人を見る真島に瑠伽が溜め息交じりに言う。

「ホストだそうです」

「ほ、ホストぉ!?何でホストがオーナーはん指名してんねんっっ!!」

声を荒げる真島を、「ちょっと来てください」と促しオーナー室へと向かう。



「昨日の夜、ホストクラブに行ったみたいで、その時隣に座った奴らしいです」

オーナー室へと歩きながら瑠伽は説明を始める。


「ホストクラブなんて、女喰いもんにする男がぎょーさんおる所やろが、そないなとこ何で行かすねん!?」

あなただってキャバクラ行くじゃないですか、と言いたいところをグッと押さえ、瑠伽はオーナー室の扉を開けた。



そんなに広くはないオーナー室の、机の上の写真立てを手にすると真島に見せた。

「この写真見て下さい」

そこには幸せそうに笑う彩香と、その傍らに一緒に微笑む男がいた。

「何や、こいつ」

「オーナーの亡くなった恋人ですよ」

「……さっきの客に瓜二つやないけ」

「そうなんですよ……」


「の、のう?」真島は低く呻く。

「オーナーはん、あの男に惚れとるっちゅう事は無いやろな?」

「いや、流石に昨日の今日でそれは無いと思いますけど、…でもこれから先、その可能性は無くはないですよね」

「そんな事言うて、あいつホストやぞっっ!!オーナーはん喰いもんにする気かもしれんやんかっ!!!」

「そうなんですよねぇ…あ、何処行くんですか兄貴!!」


部屋から足早に出ようとする真島に、瑠伽が慌てて付いていく。

「何処って、決まっとるやろが、オーナーはんに近づかんようシバきに行くんや!!オーナーもオーナーや、いっくら男前だからってあないな糞みたいな奴に鼻の下伸ばしよってっっ!!」

目を血走らせ、ホールに向かう真島の腕に瑠伽は全力でしがみ付く。


「だ、駄目ですよ兄貴!!あの人、まだ何もしてないんですから!!そんな人ボコったらうちの店にも傷がつきます!!」

「ほんなら、どないせいっちゅうねんっ!!」

瑠伽の胸倉を掴み、激怒する真島に瑠佳は青ざめながら

「取りあえず、様子を見ましょうよ、ね?」

なだめられた真島は、暫く何か考えた後ゆっくりと瑠伽を離す。


「ええやろ、今日のところは様子見や」

瑠伽の提案に、少し不服そうにしながらも従う事にした。

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