私は真島さんにとってそういう対象じゃない……か……。

コンビニの帰り道、彩香は真島の言葉にすっかりしょげてしまっていた。


別に真島とそういう関係を望んでいる訳ではない。自分の想いを告げるつもりも無い。



彼のあの様子では、女遊びには慣れているようだし、連れている女性も華やかな人だった。

自分のような一般人の女を、彼が真面目に相手をするようには思えないし
何より、自分の想いを拒絶され、避けられるのが一番怖い。

それだったら…。

たまに、『ロンディネ』に顔を出す彼と話をするだけで、十分だと思った。




沈んだ気持ちで店のドアを開けると、瑠伽が焦ったように近づいて来た。

「オーナー、お客様がお待ちです」

瑠伽の目線を辿ると、咲弥がこちらに手を振っている。


あれから毎日のように店に来ては彩香を指名していた。

「すいません、お待たせしました」

慌ててシートに座ると、咲弥は「今来たばかりなんで」と笑った。

別人とわかっていても、彼の笑顔は生き写しのようにそっくりだ。

つい、今は亡き恋人の面影をその男に重ねてしまう自分がいた。



「そう言えば彩香さんはこの間はどうしてうちの店に来たんですか?」

「え?」

「いえ、あなたが、興味本位でホストクラブに行く人には思えないんで」

「あ…」

言ってしまっていいものかどうか、彩香はしばし思案に暮れた。

「彩香さん?」


だが、もしかしたら何か突破口が見つかるかも知れないと思い

「誰にも言わないで下さいね」

と念を押した後、その理由を話した。




「成程ね…大輝にはその事について俺も困ってたんですよ。一度トラブルにもなりましたしね」

「そうなんですか…」

咲弥は頷くと、安心してくださいと言い

「レイナちゃんの事は俺からきつく言っときますよ」

「ほ、ほんとですか?」

「俺、こう見えてもあの店で立ち位置は上の方なんで」

「あ、有り難うございます。お願いします!!」

ホッと胸を撫で下ろす彩香に、「ただし」と付け加えた。

「交換条件があります」

真面目な顔で言う咲弥に、彩香は緊張した顔で返す。

「な、何でしょう?」

すると咲弥はニッコリ笑って

「今度俺とデートして下さい」

「え?」

「丸一日とは言いません。飲みに行くだけでいいんです。俺彩香さんを連れて行きたい所があるんですよ」

どうでしょう?と彩香の顔を窺う咲弥に、そんな事でいいならと快く承諾した。

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