それから一週間ほどしたある日、ジュリが事務室に訪れた。
「大輝君、お店辞めたみたいです」
「え?」
「連絡つかなくなったから、レイナお店行ってみたらしいんです。そしたら一週間前に辞めたって…」
「……そうなの…」
彩香の頭に咲弥の顔が浮かんだ。
「レイナちゃん、落ち込んでるんじゃない?」
予想していなかった展開に、ちょっと気の毒になり尋ねた。
「うん…でもレイナの為にはこれで良かったと思います。一週間もすれば、またケロッとしてますよ」
「そっか、ならいいけど…。ホスト遊びも程々にね」
そう言うと「はーい」と言って事務室を出て行った。
まさか…辞めてしまうとは思わなかった。
少しだけ罪悪感を感じる。
そう言えばと、咲弥に名刺を貰っていた事を思い出した。
「はい」
受話器の向こう側から咲弥の声がした。
「あ、あの彩香ですけど…」
彩香を名乗ると、咲弥の声のトーンが上がった。
「あ、彩香さん?嬉しいなあ初めて電話してくれたね。どうしたの?」
「あの…大輝くんの事聞きました…」
「そうなんだ、うん、これでレイナちゃんは大丈夫だと思うよ」
「でも…まさか辞めるなんて…」
申し訳なさそうに彩香が言うと
「大丈夫。レイナちゃんに今後一切関わらない約束で、知り合いの店に凄くいい条件で移ってもらったから。あいつにとっても悪い話じゃなかった筈だよ」
「そ、そうなんですか。それなら安心しました」
それで…と咲弥は切り出す
「俺との約束覚えてる?」
「ええ、勿論。いつにしましょうか?」
「いつでもいいよ。何なら今からでも」
咲弥の言葉に、彩香は焦る
「え?今からですか?それはちょっと…」
すると受話器からハハッと笑い声がした。
「冗談ですよ。じゃあ、いつなら空いてますか?」
彩香はカレンダーを確認する。
「明後日が休みなので、その日なら…」
「うん、じゃあ明後日の夕方5時に、劇場前で待ち合わせでいいかな?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、明後日。楽しみにしてますよ」
そう言うと、電話は切れた。
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