「少しここで休んで行こう」
近くのホテルへと彩香を連れ込む。
「……ぅ…」
すでに意識が朦朧としている彩香は、自分がベッドの上に寝かされた事も分からなくなっていた。
「彩香さん?」
咲弥が声をかけるが、すでに意識を無くしているようだった。
「ちょっと反応があった方が面白いんだけど、まあいいか」
彩香の首筋に舌を這わせながら、ブラウスのボタンに手をかけ、ひとつひとつ外していく。
その時だった。
ガンッッ
部屋の扉が鳴り響いた。
「なんだ!?」
咲弥は驚いて上体を起こす。
ガンッッ!!
また同じように扉が鳴る。
よく見ると、扉は既に少し歪んでいて、向こう側から何者かが衝撃を加えている事がわかる。
何度か同じような音が鳴り響いた後
ガキッッ!!
という音と共に、扉が完全に開かれた。
全開になった入口には、パイソン柄のジャケットを羽織った、長身の男が立っていた。
「あーしんど…」
そう言って、片足をパンパンと払う仕草で蹴り開けたのだと分かる。
「あんた…まさか…嶋野の…」
彼の風貌に何者なのか察した咲弥が腰を抜かして呟くと、その男は片方だけの目で鋭くギロリと睨んだ。
恐怖で声も出せない咲弥の傍らに、横たわる彩香を確認すると
「どうやら、間に合ぅたみたいやのぅ」
そう言って、彩香の身体を抱き上げた。
そのまま部屋から出ようとして、ふと足を止める。
「ホンマやったら、この場で半殺しにしたいところやけどなあ」
そう言って、背中を向けたまま肩越しに咲弥を見下ろす。
「オーナーはんの前で、お前ヤるんはちと気ぃ引けるんや。せやから、この人に手ぇ出した落とし前は後でたぁーっぷりつけさせてもらうで、首洗ぅて待っとけやッ!!」
「糞がっ!!」と言い放つと、唖然としている咲弥をしり目に部屋を後にした。
「あーぁ。気持ち良さそうに寝とるわ」
同じホテルの、別室に彩香を運び込み、ベッドに寝かせた。
彼は同じベッドに腰掛け、呼びかけてみる。
「オーナーはん?」
返事は無い。
「オーナー?」
「……彩香…」
彩香の頬に手を触れてみる。
そのまま指で後ろに髪をすく。
ゆっくりと自分の顔を彩香に近づけた。
「起きんとこのままキスするで?」
囁くように言うと、さらに顔を近づけ、寝息をたてる薄く開いた唇に自分の唇をそっと重ねた。
眉間の皺を深め目を細める。
そのまま彩香を滅茶苦茶にしてしまいたくなる衝動に駆られ、慌てて唇を離した。
チッと舌打ちをする。
「何やっとんねや。これじゃあの糞とやっとる事おんなじやんか」
はぁーとため息をつき、横目で彩香を見る。
スヤスヤと寝ているその顔を見て。
「蛇の生殺しっちゅうやつやな…」
と肩を落とした。
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