「今日、兄貴来ないんですかね」
事務室で、おしぼりを巻きながら瑠伽は彩香に尋ねた。
「え?……ええ、そうね」
パソコンで店のホームページの更新中にいきなり真島の事を訊かれて焦ってしまう。
「変な事、言っていいですか?」
「何?」
瑠伽は手を止めて、彩香をまじまじと見る。
「俺の勘なんですけど、兄貴ってオーナーの事好きなんじゃないですかね?」
予想外の瑠伽の言葉に、彩香は持っていたコーヒーカップを落としそうになった。
「ななっ、いきなり何言い出すの!?」
「いや、あくまで俺の勘なんですけど」
もしですよ?と瑠伽は続ける。
「もし、そうだったら、オーナーどうします?」
「……どうって…」
考えた事も無かった。
もし、彼が自分に振り向いてくれたら…。
……いや、仮にそういう関係になったとしても遊ばれて終わりのような気がする。
彩香は先日のホテル街での出来事を思い出していた。
女性との行為をスポーツと言い切る彼は、きっと自分にもそんな関係を望むだろう。
それはあまりにも悲しすぎる。
それに……。
「ついこの前『そんな対象じゃない』って言われたばかりよ」
「え?そうなんですか?おかしいなあ」
自分の勘に自信があったのか、瑠伽は首をかしげた。
その時、彩香の携帯が鳴った。
「もしもし、彩香さん?」
「秋山さん。どうしました?」
電話の主は秋山だった。
「今、セレナに居るんだけど、ちょっと出てこれるかな?」
「今からですか?…はい、大丈夫です」
「急で悪いね。じゃ、待ってるよ」
そう言って通話は切れた。
「ちょっとお店留守にするから、後宜しくね」
瑠伽に告げて、セレナに向う事にした。
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